ニャンコの作文
□ある夜のコト
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ちゅ、ちゅ、と子供同士の戯れのような小さなキスを目元だけでなく、額や頬や項、唇へと落としていく黒鋼に魔術師はもはや為す術無し。
「…シたくなっただろ?」
耳に息を吹き込むように囁かれたその低く扇情的な声に、魔術師は珍しく眉間に寄せた皺を寄せて楽しそうに自分を見下ろす黒鋼を鋭く睨みつけた。
「………黒たんの馬鹿」
「うるせぇ、性悪」
結局の所はどっちもどっちである。
「で。どうなんだ?」
魔術師の答えなどわかりきったように自信満々に尋ねる黒鋼がいやにムカついたが、この状況ではどうにもならない事くらいよくわかっている。
それに…、黒鋼が我慢してるという事は自分もかなり我慢しているということで。
「………うん」
ぎゅう、と首筋に抱きついて本当に小さな声で呟く魔術師はまるで子供のように頼りなくて、可愛らしくて…
「…最初から素直にそう言やいいんだよ」
珍しく穏やかな声で囁いて
やっと素直になったその唇にキスをした。
それは触れるだけのキスじゃない
もっと甘くて、優しい…恋人のキス…―――