ニャンコの作文

□ある夜のコト
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「く、黒る〜。と…とりあえず落ち着こうよ〜、ね?」
「うるせぇ。こっちはな、てめぇが俺を遊び相手としか思ってなかった頃から好きだったんだ。てめぇが俺を拒み続けるだけだったあの時もな」

黒鋼が殆ど口にしない『好き』という言葉に魔術師のシミ一つない白い頬が一気に真っ赤に染まる。

「す、す、す…ッ/////」
「ちゃんとした言葉話せ」

あまりのことに目を丸くして口をぱくぱくさせている魔術師を冷静に見つめながらも浴衣の裾から手を入れようてしている辺り実に欲望に忠実だ。

「ちょっ、何して…ッ」
「その気にさせてやるよ」
「…なッ!!」

更に凶悪な顔をする黒鋼にいよいよ魔術師の思考は混乱へ一直線だ。

「俺の事は好きなんだろ?さっき散々言ってただろうが」
「そ、そーいう事言うのはズルいと思…」
「『愛してる』…だったか?」
「〜ッ!!!」

妖しい笑みを浮かべる黒鋼とは対照的に魔術師の頬が更に赤くなる。
先程とは立場が全くの逆だ。

「…どうなんだよ」

さっきまで自分が何をしてもむすっとした表情をするだけだったはずの黒鋼の変わり様に魔術師のペースが一気に狂ってしまった。
先程まで妖艶な光を宿していたその蒼い瞳はすっかり涙目になって、まるで泣きかけの子供のようにうるうると潤んでいる。

「…す、き…です」
「あぁ?」
「………好き…」
「聞こえねぇ」

熟れた林檎のように頬を赤くして睨み付ける魔術師に、やっと黒鋼が小さく微笑み大きなその左手で金色の髪を撫で付ける。
微かに涙が浮かんだその瞳には、柔らかな口付けを。

「今更何で照れるんだよ」
「…照れて、ない…」
「顔、かなり赤いけどな」
「―――ッ!!!」


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