ニャンコの作文
□ある夜のコト
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地の底から響くような黒鋼の声色に、魔術師は素っ頓狂な声を上げた。
不意に嫌な予感がしてべったりとくっついていた体を離そうとするが、時既に遅し。
ぶちりと一本の線がキレた黒鋼からは逃げられなかった。
「く、く、くろりん???」
ぽすん、と音を立てて魔術師の体が敷かれていたふわふわの布団に沈み込む。
視界に映るのは灯篭の灯りに照らされた天井と、黒鋼の顔。
…しかも本気で怒っている。
「……少ーし甘やかし過ぎたみてぇだな」
「あ、あの、あの、黒様???」
急にキレた黒鋼に今度は魔術師がオロオロする番だった。
が、そろそろ我慢の限界に達している黒鋼としてはそんな事はお構いなし。
「最近調子乗ってんだろ、お前。俺を舐めてんな?」
にやりと真っ黒なオーラを纏いながら口元を歪ませる黒鋼に、魔術師の背中にはひやりとした汗が浮かぶ。
…多少図星だったから。
「最近らしくもなく優しくし過ぎた。お前、俺が絶対に手出ししねぇと思ってんだろ?
「そん、な…事は…」
それははっきり言って図星だ。
体を重ねる事は嫌いではないし、むしろ好きな方だった。
黒鋼の事は自分にとって本当に特別な存在で…愛していると言ってもいいはずだと思う。
こうやって、全ての心の内をさらけ出して共に先を歩んで行ける幸せをくれた黒鋼にいくら感謝しても足りない気がする。
だから自分の全てを黒鋼にあげたいとは思うけれど、こうやって大事にされていると思う度に嬉しくて嬉しくて…つい、もっとそれを感じたいと思ってしまうのだ。
…それがこの状況を作り出したとしても…。