短 編 *.

□結局あなたは何ですか
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ああ、眠い。

口を開けばそんな言葉ばかりが出てくるような昼休みの時間。昼食を終えて満腹感を味わうと自然と人は眠気というやつに襲われてしまう。空は青いし陽は暖かいし、一度体を横に倒すともう無気力になってしまうものだと思う。「この後の授業?んなモン知らねえよ!」といった具合に。しかしながら恐らく授業に出なければ、授業に出ること以上に面倒なことが起きるだろう。それは自分の保護者代わりの奴からの説教だったりする。それが無ければサボっていたのかと言われてしまうと、正直言って頷くほか無い。

閑話休題。眠すぎて瞼を落としかけたとき、ふいに誰かが自分を見下ろすように近くに立った。誰だと思いながら面倒そうにそちらへと視線を投げた。ああそんなヤツいたな、くらいの認識しかしていない後輩。話したこともなければ殆ど見かけたことも無いし名前も知らない。ただ何か用があって来たんだろう。用があるのなら簡潔に話してもらうのが一番ラクだ。



「……どうしたんだよ、ハナシなら簡潔に頼むぜ?」

「あの……っ、伊達先輩!」

「Ah?」

「わ、私、先輩に言いたかったことがあるんです!」



かああと顔を真っ赤にして恥ずかしそうに顔を俯けて。そんな様子を見ればその先に紡がれる言葉を予測するのも安易なことだった。好きですとか付き合ってくださいとかそういう甘ったるくて嘘くさい言葉はもう飽きるくらいに聞いた。どうせコイツもそうなんだろう、ってそう思った。きっとこの子のことが好きな俺のダチに言えば頬でも叩かれるだろうけどな。恐らく。



「言えよ、言いたかったこと」

「……ずっとずっと、先輩のことが」



大好きです!付き合ってください、なんだろ、どうせお前が言うのは。
瞬時に「断る」と言う準備は出来ていた。ザンネンだがお前の気持ちも受け取れねえよと手を振る。そうしたら泣いてしまうのかもしれないが、そんなの構うことじゃないと思った。泣こうが恨まれようがストーキングされようが笑われようが何でもいい。俺が振った後で他の男と付き合うことくらい目に見えてる。学生の恋愛なんて所詮そんくらいだろ。過去に恋愛経験なんて殆どないが、俺と別れた後や俺が振った後だってスッパリと感情を切り離して、別の男に同じ笑顔を向けてる。俺に言った「好きです」なんて甘いものなんだろ。軽いものなんだろ。そう思って、分かっているのに、いいぜなんて頷けるほど俺も馬鹿じゃない。成績悪いとか関係ねえ。馬鹿な男ほど騙しやすくて裏で笑えるのかもしれねえけどな。



「先輩のことが、大嫌いです」

「は……?」

「だから、伊達先輩のことが大嫌いなんです死んで下さい!」

「ちょ、ちょっと待て、Stop!お前なに言ってんだ」



それなのに、見下ろすように立つ彼女から素晴らしくいい笑顔で告げられたのは「大嫌い」という、俺の想像の真逆をいく言葉。 まさかそんな言葉が告げられるとは思いもしなかった。嗚呼もしかしてコレは、あれか。愛情の裏返しとか言うあれなのか。いやでもその割には真面目な顔で言いすぎだろ。本気か……?こいつ。思わず勢いで倒していた身を起こした。



「一応聞いておくが……コレは愛情の裏返しか?」

「え?本心なんですが」

「Ha!い、いや素直に言えよ、好きなんだろ?」

「触らないで下さい!先輩に触られるとナイフで刺したくなるんです」

「……What?お前何なんだよ」

「いつも先輩の家に核爆弾落ちないかなとか、先輩が学校で来る途中で交通事故にあって死んだりしないかなとか、誰かが手を滑らせて調理実習で先輩の心臓にザックリと包丁が突き刺さらないかなとか思ってるんです!本当に死んでください!ほんとは先輩がいま視界にいるだけでも吐き気がして……」



ああ、訳がわからねえ。そんなことなんで俺に言いに来るんだ。
視界に入ったら吐き気がするなら、俺のところに来なきゃよかったじゃねえか、そこまで俺に死んでほしいか。



「御願いします私の為に死んで下さい!」







局あなたは何ですか
(そのままサックリとナイフが俺の胴体を貫通するかと思った)
(一瞬、視界にうつる世界の色が赤に見えた)





10/04/03
と、突発ネタすぎる。何したかったかって聞かれると分かりません。
とりあえず後悔はしてない!と言っておきます。続きとか書く気ないですけど何か(^ω^)


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