テニスの王子様T

□いちごみるく
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出会いのきっかけはいちごみるく味の飴玉だった。








たまたま嫌いな数学の時間に屋上でサボっていたブン太は、特にする事もなくただぼーっと空を見上げていた。




本当は携帯でもいじってようと思ったけど、運悪く教室に忘れてしまった。








壁に背中を預け、前に放り出した足をぱたぱた。





少しネクタイが苦しかったからちょっとだけ緩める。








とその時、ブン太と同じくサボりに来た生徒なのか、屋上の扉がゆっくり開いた。





ブン太は驚いて扉の方を凝視する。





すると、扉から現れたのは一人の少女。



恐らく同じ学年だろう。





廊下ですれ違った事があるような気がする、見覚えのある顔だ。





向こうもブン太に気づいたらしく、一瞬驚いた顔を見せた後こっちに近付いて来た。








「ブン太…くんだよね?」








隣、いい?








ふわりと笑ってそう聞かれたブン太は少し横にずれる。








「おうっ」








ちょこんと座る少女は何やらポケットの中をがさごそ。





不思議に思いながらもブン太は黙ってその様子をじっと見つめていた。








「あ、あった」








急に少女が嬉しそうに声を上げた。








そして、あの空に輝く太陽よりも眩しい笑顔でブン太に笑い掛ける。








「はい、あげる」








手を伸ばしてブン太に渡したのはピンクの包みにくるまった飴玉。







いちごみるく味だよ、なんて言いながらいまだに笑う少女に、ブン太はお礼を言う事しか出来なかった。








その後すぐにチャイムが鳴ってしまい、少女はふらりと屋上を出ていった。





残っているのは、ブン太の口の中にあるいちごみるく味の飴玉だけ。








そして、ブン太の心にある想いが残った。








いちごみるくに負けないくらいの甘い感情。








『いちごみるく』





(今度会ったら名前聞こう)
(それから、俺の気持ちも言わなきゃ)
(飴玉ありがとう、と)
(一目惚れしました、って)





―――END―――

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