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□その一切が…
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*中編*










体育委員会で活動をするようになって思い知らされた。

七松先輩のように…なんて、おおよそ無理な話だった。

先輩は、五、六年生でさえ呆れる程の体力馬鹿…いやいや、体力の持ち主で、私を含めた一、二、三年生、はては四年生でさえ根をあげるような仕事(演習コースの下見等)でさえ喜々としてこなしていた。
これが一年時からこの調子というのだから…お手上げだ。


完全を求め、妥協を許さない私だったが…妥協した…。
『先輩のようになりたい』はどうやら無理がある。
体力は勿論、性格うんぬんが違いすぎる。
ならば、彼の人の支えになりたい。
どこまでも眩しいあの人に、頼られる存在になりたい…と。



その日から私は死に物狂いで勉強し、血ヘドを吐くような鍛錬を己に課した。



もともと優秀であった私は、間もなく学園一の成績に踊り出る。
時にはそれを誇示するように、時にはそんな自分に酔ってみる。
そうする事でより一層自分を追い込み、高めていった。





そして時は過ぎ…
私は四年生になった。


六年生になった七松先輩は、体育委員長になられた。

ますます先輩との差が広がってしまったと落胆したが、最近…

「滝夜叉丸ー!そっち頼んだ!!」

「滝!バレーボールはどこだ!?」

と、先輩から声がかかる事が多く感じられる。
気のせいでなければ、今までの努力が効を奏したという事だろうか。
となれば…
『先輩の支えになりたい』という目的は果たされたと考えてもよいのだが、私の心は晴れない。

何か他に思う事があるというのだろうか?

否、…私はそれを自覚している。



それを自覚したのは私が三年生の時、自室で読物をしていた私の耳に、他の生徒同士の話声が聞こえてきた時だった。
取るに足らない色恋話だと、というより忍者の三禁はどうした…と、特に気にも止めなかったのだが…

「故郷に幼なじみの子がいてさ…」

「へぇー。その子が好きなのか?」

「そ、そうなんだ…。ずっと一緒にいれたらなって、思ってて…」



ずっと一緒に…
その言葉に私ははっとした。



日頃の鍛錬の成果もあり、三年生でありながら委員会の上級生達についていけるようになった。
凄い、偉いと褒められる一方、やはりまだ下級生。
時間が遅くなったり、多少危険が伴う仕事には連れて行ってはもらえなかった。
そんなある日の委員会で…

「もう帰っても大丈夫だぞ、滝夜叉丸」

「平、お疲れー」

と委員長や他の上級生から口々に言われる。
勿論、七松先輩も…

「滝夜叉丸!また明日なー!!」

…。
私はまだ出来るのに。
もっと委員会活動をしていたいのに。
もっと先輩方と仕事をしていたいのに。

優秀な私だからこそ思う、下級生扱いされた事への不満だと思っていたのだが…あれは…


もっと先輩と…七松先輩と一緒にいたかった。


ただそれだけだったような気がする。



七松先輩とずっと一緒に…。
そんな事、叶うはずもないが…私の心はそれを望んでいる。



そう、つまり…





私は七松先輩を恋慕っているのだ。










勿論そんな事は言えるはずもなく、今に至る。










またもや続きます…!→

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