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□誰が為
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「ただ今戻りました」

「お帰り〜」

「…なんか向こうが賑やかですね」

「ああ、風魔の与四郎君が来てるんだよ。喜三太君に会いに来たんだって」

「与四郎が…そう、ですか」















『誰が為』
















学園の裏庭から少し外れた古い手裏剣演習場。
今はほとんど誰も寄り付かなくなったこの場所が、二人の憩いの場だった。



「おー、待ったっけ?」

「いや、俺も今来たとこだ」

「そっか。久方ぶりだなぁー留三郎」

「おう」



与四郎が学園に来ると二人は人目を避けて会っていた。
だからといってどうこうするわけでもなく、何気ない会話を楽しむのだ。



「したっけでっかいつつっこ見っけたからよ、こりゃあ喜三太が喜ぶなーと思って取って来たんよ」

「ナメクジ大好きだからなぁ喜三太。委員会中にまで連れて来るから困ったもんだ…」

「ははっ、喜三太らしいなー」



特に意識しているわけではないが、二人の会話はお互いの後輩・喜三太についての話が多くなる。
かわいい後輩の話をしているので嫌な訳はない。
だがここ最近それだけでは満足できない思いがあった。
それが何故なのかはわからず仕舞いであったが。



「おっと、だいぶ日が傾いてきたな…」



会話に夢中になっている間に夕暮れ近くになっていた。



「行くのか?」

「ああ、山野先生との集合時間に間に合わなくなるからなー…」



これからまた忍務に赴くという与四郎。



「そっか…気をつけてな」



どちらともなく気落ちした雰囲気が漂う。



「喜三太にまた来るって約束したっけ…近いうちに来るだーよ」



与四郎のその言葉に顔を伏せ黙り込む留三郎。



「…」

「どうした?留三郎ー」



いつもなら笑顔で「ああ、またな」と見送ってくれる留三郎。
どうしたのかと近付こうとすると…



「き、喜三太に、じゃなくてっ…たまには、お、俺に会いに来いよっ!」



言って与四郎と目が合うなり逃げ出した留三郎。
それはもう凄い早さで。

一人残された与四郎。
しばらくポカンと立ち尽くしていたが…



「…んじゃ、次はお前に会いに来っかな」



ニヤニヤしながらそう呟くと、ヘッポコ事務員の元へ出門票を書くために向かって行った。










(何言ってんだ俺っ!これじゃまるで喜三太に嫉妬してるみたいじゃ…は、恥ずかしっ…!!)

(留三郎の奴、首まで真っ赤だったなー)



その後、柱に頭を打ち付ける留三郎と異常なまでに上機嫌な与四郎の目撃情報があったそうな。










* * * * *

友達以上恋人未満な与×留。
うまく書けない…orz



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