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□はい、チ〜ズ
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「おい、何だこれは」

「あ………」






























【はい、チ〜ズ】






























その日の雑渡は上機嫌だった。

(ふふーん♪鍋のお肉も買ったし、デザートに好きだって言ってたハーゲン●ッツのいちご味も買ったし♪♪何より…今日は一緒にお風呂入る約束したしねっ!!!帰りがちょっと遅くなっちゃったから先に帰ってるかな…留三郎君っ)



雑渡と留三郎は同棲していた。
まあいわゆる恋仲なのだ。

馴れ初めは約半年前、伊作が学校帰りに怪我をした雑渡の手当をした事から始まる。
その後、お礼と言っては一人暮らしの伊作宅に頻繁に出没するようになった雑渡。
そしてたまたま留三郎が遊びに来ていた時に雑渡がやって来て、留三郎に一目惚れ。
それからはアタックあるのみと言わんばかりの猛アタックで、最後は留三郎が絆される形で付き合うことになった。
そして、もともと一人暮らしを考えていた留三郎に『それなら一緒に棲もうよ、恋人同士なんだし』と提案し、同棲し始めて早3ヶ月になる。

やたらベタベタ甘々したがる雑渡とは違い、照れもあって素直に甘えられない留三郎。
そんな留三郎がかわいくて堪らない雑渡は構ってもらおうとあの手この手を尽くし、時には赤面する留三郎を堪能し、時には照れ隠しから殴られたり…と端からみたらバカップル間違いない生活を送っていた。
そんな中、雑渡は付き合いだしてから間もない時からあるお願いを留三郎にしていた。
それが『一緒にお風呂』である。
しかし、何度となく体の関係を重ねても「恥ずかしいから…」と留三郎はなかなかOKしてくれなかったのだ。
それが昨日、雑渡がいつものように留三郎を後ろから抱きしめ甘えていた時…



「ねぇねぇ留三郎君、一緒にお風呂入ろうよー」

「…」

「まだダメ?」

「……た…ら」



再三のおねだり。
いつものように一刀両断されるかと思いきや、何言かを呟く留三郎。



「ん?何々??」



小さすぎて聞こえなかった言葉をもう一度尋ねると…



「あ、明日なら…いい…」



待ちに待った承諾の言葉だった。



「…え、本当っ!!?でも何で明日…どうせなら今から…」



舞い上がり、今すぐにでも風呂に入ろうと留三郎の服を脱がせにかかる雑渡に…



「風呂なら…今さっき入ったばっかだろうがっ!!!」



留三郎の怒声と頭突きが炸裂した。



「っいててて……そういやそうだったね…嬉しすぎて忘れてたよ」



雑渡が微笑みながらそう言えば…



「―…っ!!!」



顔を真っ赤にしてそっぽを向く留三郎。



「いやぁ、でも本当に明日楽しみだなぁ。明日って留三郎君バイト無い日だよね?私も仕事終わったらすぐ帰ってくるからさ、お鍋でもしよう!そして一緒にお風呂…」

「あー!もー!!わかったからっ!!俺は寝るっ!!」



堪えられないといった様子でベッドに潜り込んでしまう留三郎。



「えぇー!?もう寝ちゃうのー!??イチャイチャは…」



悲鳴じみた不満を漏らせば…



「うっせー!それ以上言ったら風呂は無しだ…っ!!!」



途中で遮られ、おあずけ宣言。
そんな事言われたら黙るしかない。
仕方なく、自分もベッドに入り留三郎を後ろから抱きしめる。



「っ…おい!今日はっ…」

「うん。何もしないからちょっとこうさせて…?」

「…か、勝手にしろっ」

「うん」



なんて、甘いわっ!というツッコミが聞こえてきそうな夜を過ごし、次の日に。
仕事が終わり、買い物を済ませた雑渡はるんるん気分で玄関の戸を開ける。



「たっだいまー!」



が、返事はない。
変わりに青筋を浮かべた留三郎が何かを持って立っていた。
ここで冒頭に戻るわけである。

所変わってここはリビング。
ソファに座る留三郎の真正面にフローリングの床に正座した雑渡が対面していた。



「…で、これは何なんだ?」



今にもキレそうな怒気を纏った留三郎がにこやかに尋ねる。
つられてにっこりしながら雑渡は答える。



「それはアルバムだよ」



反省の色の無い雑渡の態度に留三郎がキレた。



「んなこたぁ…わかってんだよっ!!俺が言いてぇのはその内容だっっ!!!!!」



そう叫びながら立ち上がり、アルバムを開いて床にたたき付ける。
散らばった写真をかき集める雑渡。



「あーあー…!せっかくの写真が…!」

「何が…せっかくの、だっ!!!一体いつの間にこんな写真撮ってやがったんだ…!」



その写真にはどれも留三郎が写っていた。
ただ普通の写真とは違い違和感がある。
全てにおいて目線が合っていないのである。
横からであったり、後ろ姿だったり、寝顔なんてのもある。
そう、その写真全部が所謂『盗撮』であったのだ。



「日頃からコツコツと、ね。部下達にも手伝ってもらったりしてさ…」

「嬉しそうに言ってんじゃねーよっ!」



まじまじと写真を眺め、嬉々として語る雑渡に留三郎の怒りのボルテージはますます上がる一方だ。



「えー…だって留三郎君いっつも写真撮らせてくれないし、プリクラだって…」

「男二人でプリクラコーナー入れるわけねーだろうがっ!!そ、それにっ…」

「それに?」



怒鳴ったかと思うと僅かに頬を染めて下を向く留三郎。
何か言いた気なその様子に…

(照れちゃって…かわいいなぁ)

などと思っていた雑渡。
意を決して話し出した留三郎であったが…



「は、恥ずかしいん…だよ。撮られんの。それに俺と写ってる写真なんて見られたら困るだろ…」

ピロリロリーン♪



何ともKYな機械音に遮られた。



「…は???」

「照れてる留三郎君ゲットーv」



そして更にKYな雑渡の発言により彼の怒りはピークに達した。



「いやー我ながらよく撮れてるよ、うん!留三郎君がこんな表情するのって二人でいる時くらいだからさぁ、常々チャンスを窺ってたんだよねー…って、あの…留三郎君…?」

「人が…真剣に話してたっていうのに………」



雑渡の本能がまずい!と危険信号を鳴らす。
額の青筋はさらにくっきり浮かんで頭から湯気でも出そうなくらいに留三郎は怒っている。



「えっと、あの…ゴメンね?で、でもっ留三郎君がかわいくてつい…」

「黙れこの変態がぁっっ!!!!!!!」



謝ってみたものの時既に遅く、怒り狂った留三郎は雑渡の手から折りたたみ式の携帯を奪うと、勢いよく逆に折り曲げた。
バキッ!と小気味よい音を立てて二つに分裂した携帯。



「ゔぁああああーーー!!!私の…私の携帯があぁっ…!酷いよっ…この中には沢山留三郎君のプライベートショットが入ってたのにぃっ…!!!」

「それも盗撮じゃねえかっ!!」



バラバラになった携帯を手に泣き崩れる雑渡。
それを尻目に留三郎は…



「これもっ…!」



そう言うと雑渡がかき集めた盗撮写真をわし掴む。



「…あぁっ!それだけはっっ…!!!」

「没収!処分!!」



気づいた雑渡が叫ぶも一足遅く、キッチンのシンク上にて無情にも写真には火が着けられた。
燃え上がる炎、雑渡がシンクに駆け寄った時にはほぼ全ての写真に火が着いており、急いで鎮火するも殆どが黒い灰になってしまったのであった。



「ううぅっ…私の宝物だったのにぃ…」



灰と壊れた携帯を握りしめ、心底がっくりと泣き崩れる雑渡。
あまりにも落ち込むその様子に…

(ちょっと…やり過ぎたかな…)

とも思ったのだが…

(いや…やり過ぎなのはあいつだ!今回の事だけじゃねえ!この前だってその前だって…ちょっとは反省しやがれっ!!!)

そう自分に言い聞かせると浴室へと向かう留三郎であった。





「…どこ行ったんだ、あいつ」



風呂から上がった留三郎はキッチンで項垂れているだろうはずの雑渡を探すが、何処を見ても雑渡はいない。
玄関を見れば雑渡の靴が無い。
どうやら出て行ったらしい。
反省して謝ってくるかと思っていたのに、今の状況で自分を放って出て行った雑渡にイライラが募る留三郎。



「くそっ!勝手にしろ…!!!」



手に持っていたバスタオルを玄関の扉へ投げつけ、寝室へと入って行った。










* * * * *

あれ?
長くなったので一旦切ります…!!


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