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□マジで●●れる5分前
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(今日は…、今日なら…奴らも、いつもはそっけない雷蔵もっ!私に優しくかまってくれるに違いないっ!!!なぜなら今日はっ…!!!)

(私の誕生日っっ!!!!!)
















【マジで●●●る五分前】















(今日は休み…!雷蔵は朝から委員会の当番だが…よし、とりあえずみんなに会いに行こう!!)

三郎は部屋から出て長屋の廊下を歩き出した。
すると廊下の奥の方でドタバタと走る人物が。

(あれは…)

三郎はその人物に向かって声をかけた。



「おーい、竹谷ー」

「ん?おお、三郎っ」

「どうしたんだそんなに騒がしくして…」

「わりっ!今緊急の委員会で忙しいんだっ!またなっ」



そう言うと竹谷はまた騒がしく去って行った。

(また毒虫でも逃げたんだろうか…)

毎度の面倒事を不憫に思いながら三郎はまた歩き出した。
少し行くと何やら荷物を小脇に抱えた人物を見つけた。



「兵助ー」

「おー、三郎」

「そんな荷物抱えてどこ行くんだ??」

「今から…食堂のおばちゃんと、月に一度の豆腐研究会なんだっ!!」

「…豆腐…研究、会?」

「そうだ!この日をどれだけ待ち望んでいたかっ…!!だから俺は忙しいんだ!!じゃあな!!!」

「あぁ…」



そう言って足早に去っていった兵助。

(豆腐バカが…)

三郎は、心の中でそう毒づかずにはいられなかった。
また少し行くと私服姿の人物を見つけた。



「勘右衛もーん」

「あ、三郎」

「どこか出かけるのか?」

「学園長のお使いでね」

「それなら私も…」

「尾浜せんぱーいっ!!」

「庄左ヱ門と、彦四郎…?」

「今行くー!!悪いな、あいつらも一緒でちょっと急ぎだから…んじゃっ!」



そう言い勘右衛門は颯爽と駆けて行った。

(私以外の学級委員長委員会でお使いなんて…ちぇっ)

すっかり拗ねた三郎は校庭の端にある木に登り、ふて寝する事に決めた。

(何だよみんな…そりゃあこないだ竹谷の顔でくのいちの腰まき盗ってきたり、兵助の顔で豆腐いらない宣言してみたり、勘右衛門の顔でうーん、いててて…って言ってみたり、雷蔵の顔でピンヒ履いてみたりしたけどさ…今日は私の誕生日なのに…もういいさ、ふんっ…)

そうして眠り込んだ三郎。
次に気が付いた頃にはすでに日が傾いており…



「ふぁーあ、もうこんな時間…」



(雷蔵も戻ってるはずだし、帰るか…)

とりあえず部屋へ帰る事にした。










「ただいまー…」



意気消沈しながら部屋の戸を開けると…



「「「「三郎っ!誕生日おめでとー!!!」」」」



と四人の声が盛大に響いた。
天井からは『三郎、誕生日おめでとう!』という幕、部屋の真ん中にはボーロにご馳走、少々派手な包み紙で包まれたプレゼントらしき物。



「え、何だ…これ…」



呆気に取られている三郎を部屋に引っ張り込み、皆は話す。



「もー、三郎にばれないように用意するの大変だったんだよ?僕は中在家先輩に協力してもらってボーロ作ったし」

「俺は料理なんて出来ないからその材料調達。ちょっと前から牛や鶏の餌調節してさ」

「おかげでいい牛乳と卵使えたよ、ありがと竹谷」

「おうっ!」

「俺は食堂のおばちゃんに協力してもらって、三郎も美味いって言ってた豆腐ステーキを作って来た。豆腐は俺が吟味に吟味を重ねた最高の一品だぞ?他の料理はおばちゃんからの差し入れだ」

「俺はみんなを代表してプレゼントを買いにね。行く前に庄左ヱ門と彦四郎に会ってさ、三郎の誕生日プレゼント買いに行くって言ったらあいつらも何かプレゼントしたい!って言うから一緒に連れてったんだ」



未だに状況に付いていけてない三郎に、ボーロや豆腐ステーキを食べろと勧めたり、プレゼントを開けてみろと急かしたり。
思いがけないサプライズパーティーに三郎は…



「あ、りがとうっ…」



柄にもなく感極まってお礼を言ったという―――。




















「―――っていう夢を見たんだが、今朝…」

「ふーん。豆腐ステーキは美味いよな」

「豆腐バカが…」

「餌の管理は毎日チェックしてるから、毎日美味い牛乳と卵が取れるぞ!」

「将来飼育委員め…」

「庄左ヱ門と彦四郎に三郎の誕生日だって言ったら、「そうですか…」って微妙な顔で言われて…ほら、三郎これっ」

「何だよ…」

「その辺にあった紙に『おめでとうございます。庄左ヱ門、彦四郎より』ってメッセージくれたぞ」

「思いっきり殴り書きじゃないかっ!」

「よかったなー」

「このっ…忘れられた16年野郎が…!ら、雷蔵っ!君からは何か祝いの言葉とか無いのかっ…??」

「ん?そうだね…」

(雷蔵っ!信じてたよっ!!!)



「いい夢見れてよかったね」




「ら…らいぞぉおおおおおっ!!!!!」

(((さすが雷蔵…)))



「まあまあ、落ち着けって」

「落ち着けるかっ!ていうか私の誕生日なのに何この状況!!?」

「誰も祝わないなんて言ってないだろー?」

「そうそう。盛大に祝ってやるって」

「………」

「たーっぷり可愛がってあげるからねっ、三郎?」

「わ…私の夢を返せーーー…!!!!!」





※現在状況
後ろ手に縛られ足も一括りにされ転がされている三郎。
それを監視&拘束する竹谷。
布団を敷く兵助。
怪しい薬品を用意する勘右衛門。
同じく怪しい道具を用意する雷蔵。





三郎の誕生日は盛大なお祝いがされたそうです。










終わり



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