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□これからもどうぞよろしく
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※留三郎→大学二年生、竹谷→大学一年生















ザァー…ザァー…

激しい雨の中、男が一人傘も差さずに歩いていた。



(あれ…ここどこだ…?雨…傘、もういいか…もう、どうでもい、い…)



男はその場に倒れ込み、気を失った。




















「もうあがっていいぞ竹谷ー」

「はい!お疲れ様です、お先失礼しますっ!!」



飲食店のバイトを終え、裏口から出た竹谷。
店の裏口は狭い裏道である。
傘を差し歩き出すと、大通りに出る少し手前にいつもは見ない塊があった。
何だと思ってよく見ると塊が動き、咄嗟に人が倒れているのだと判別できた。



「だっ、大丈夫ですかっ!??」



傘を投げ出し駆け寄る竹谷。
倒れている人物は辛そうに呼吸を繰り返しているだけで反応は無い。
体に触れてみると異常なまでに熱く、このままではマズイと思った竹谷が…



「しっかりして下さい!!今救急車呼びますからっ…!!」



と、立とうとすると倒れている人物に腕を掴まれた。



「いいっ…病院は、行きたくない…」



虚ろげな表情で訴えて来る。
あまりに必死なその姿に竹谷は…



「でもっこのままじゃ…!…じゃ、じゃあ家に!!こっから近いんで、とりあえず来て下さいっ!!」



と、突拍子もない事を言った。



「…」



何も言えないでいるその男に…



「いいですねっ!?」



と、強く促すと男はコクンと頷いて気を失った。




















『留三郎、毎日来なくても大丈夫よ。あなたも大変でしょ…』

『何言ってんだよ母さん。二人っきりの家族だろ?』



ここは病院の一室。
留三郎の母親は数週間ほど前から体調を崩し入院していた。
その母親の病室に留三郎は毎日顔を出していた。



『あ…俺、大学辞めて働こうと思ってんだけどさ…』

『何言ってんの!せっかく入った大学でしょ?こんな病気すぐ治っちゃうからちゃんと行きなさい!』



留三郎が中学校に上がったと同時期に父親が事故で他界し、それから女手一つで留三郎を育てた母親。
その母親の望みが留三郎に大学に行ってもらう事であったので、留三郎は必死に勉強し大学に入ったのであったのだ。
しかし今の状況ではとても大学へ行っている余裕は無く、散々討論した結果…



『じゃ、休学にしときなさい!』



という母親の一言で休学となった。





手術を受け、母親の病状は回復に向かっていた。
そんなある日バイト中の留三郎に一本の電話が入る。
かけてきたのは母親の入院する病院。
話を聞くや否や留三郎は取るものも取り合えず病院へ向かった。
が、時遅く…既に母親は息を引き取っていた…。





たった一人の肉親であった母親が亡くなり、生きる希望を失った留三郎。
葬儀を終え数日たっても心は宙を彷徨い抜け殻状態であった。
絶望感に苛まれフラフラ歩いているうちに…知らぬ土地で雨に降られてしまったのだった…―




















「ここは…」

「あ、気が付きましたか!?よかったぁ〜…!!」



知らない部屋、知らない男に目をぱちくりさせる留三郎。



「昨日の事覚えてないんですか?」

「昨日?」



状況が掴めないまま知らない男に質問される。
そう言われて思い出そうとするものの、何故か記憶が出て来ない。
黙ったままの留三郎に…



「昨日、雨の中倒れてたんですよ食満先輩」



と知らない男は伝えた。
ああそうか、歩いてたら雨になって、傘持ってなくてそれで…



「って、何で俺の名前知ってんだ?俺はお前なんか知らないし、しかも先輩…?」

「あ…着替えさせた時に財布が出て来たんで…ちょっと覗かせてもらったんですよ…。そしたらウチの生徒手帳が出てきたもので…見たら先輩だったって訳です」



勝手に見てすみません…と謝る後輩らしい男。



「いや…、助けてくれてありがとな」



と、少し笑って礼を言えば…



「いえいえっそんな全然っ!!」



と、謙遜しまくりに答えた。



「えっと…お前名前は?」

「あ、竹谷です。竹谷八左ヱ門!」

「そっか、竹谷か。ホントありがとな、服洗って返すから。じゃあ帰るわ」



と、留三郎が帰ろうとすると…



「まっ、待って下さいっ!!」



竹谷に肩を掴まれた。



「…何だよ」



と、留三郎が少し不機嫌そうに言うと…



「あのっ、俺学校で先輩見たこと無いんスけど…あんまり来て無いんですか?」

「あぁ、休学中だ…」

「あ、そうだったんですか…何かあったんですか…?」

「別に…」

「失礼だと思ったんですけど…手帳見てお家に電話してみたんです…」

「…!」

「でも繋がらなくって…」

「…」

「…大丈夫ですか?何かあったら俺っ…」

「うるっせーな…!!何でテメェにいちいちそんな事説明しなきゃならねーんだっ!!」

「あの…でもっ!」

「一晩泊めただけでいい気になってんじゃねえよ!!そんな事言われんなら助けてもらわなかった方がマシだったっての…!」



心配してくれている竹谷につい怒鳴ってしまった。
母親を失った悲しみと虚無感で心が荒んでいた留三郎。
竹谷は心から心配してくれていると分かってはいるが、今の留三郎にはその優しさが痛かった。



「でも…」



それでもまだ何か言おうとする竹谷。



「何だよ…」

「辛そうだったから…寂しそうな、悲しそうな顔してたから…放っておけなかったんです…」

「…!!!」



竹谷のその言葉に声を失う留三郎。
そして…



「せっ先輩!!どうしたんですか!?何で泣いてっ…」



そう言われて自分が涙を流している事にようやく気付いた留三郎。
気付いてしまうと涙は次から次へと溢れ出て…



「な、んで…俺泣いて…」



自分でも止め方が分からない。
今までの辛かった事や悲しかった事が次々と頭を駆け巡り、ついにはしゃくり上げて泣き出してしまった。
そんな留三郎を竹谷はギュッと抱きしめ…



「泣きたい時は泣いた方がいいんですよ?俺でよければ話聞きますから…」



抱きしめられた腕の強さと囁かれた言葉が温かく、留三郎は自分も竹谷を抱きしめ声を上げて泣いた。





留三郎は今までの事を泣きながら竹谷に話した。
しゃくり上げ、時折嗚咽すら混じる留三郎の話を竹谷は黙って聞いた。
ひとしきり話し終え、落ち着いた留三郎。
改めて帰ろうとすると…



「先輩、俺と暮らしませんか?」



と誘われる。
そこまで迷惑かけれないと断る留三郎だったが…



「俺と暮らせば家賃は今の半額になりますし、食事代だって二人の方が割安です。金が浮けば学校だって復帰出来るでしょう?」



と、優しい優しい笑顔で再度誘われた。



「考えてみる…」



と言いその場は帰った留三郎。
しかし竹谷の再三の誘いにより一緒に住む事に。
しばらく一緒に暮らしていると留三郎の復帰の目処も立ってきた。
そんな折、留三郎が今さらながら竹谷に聞いた。



「お前あの時何であんなに親切だったんだ?見ず知らずのしかも…男に」



そう問われ、意を決した様に竹谷が口を開く。



「それは…その、雨の中で弱ってる先輩を見つけて、なんか俺が守ってあげなくちゃって思って…。そのまま帰したら先輩が消えちゃうんじゃないかって心配になって…それで、あの…一目惚れです!すみませんっ!!!」



一世一代の告白をした竹谷。
だが留三郎からの反応が無い。
恐る恐る留三郎を見てみれば…



「先輩…耳まで真っ赤ですよ…」



茹蛸状態の留三郎がいた。
かくして気持ちが通じ合った二人。
新たな同棲生活が始まったとさ。










* * * * *

留受け好きのお友達とのメールで生まれたこの話…結構気合い入れて書いたので使ってみました(爆)

留には六年メンバーの友達がいるのですが、迷惑かけちゃいけない…と思って何も話さず音信不通になってます。(同棲後にちゃんと話しました)

続きを…書けたら書きたいなぁ…


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