parallel 1
□ひざまずいてあいしてる 5
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嫌に熱い温もりが煩わしい。
「あっつ…」
慣れない暑さと不快感に目を醒ませば、目の前に映る焦げ茶色の傷んだ髪。
ああ、赤西か。
寝起きの、あの朦朧とする意識の中でそう思った。
起きたときに隣に女の子が不在なことも、その代わりにいるのが教員の赤西だなんてことも、その両方があまりに不自然で笑いすら出てこない。
どれだけ寝返りを打ったのかしらないけれど、俺を抱きしめるように寝てる赤西からはボディソープの優しい匂いがした。
赤西の寝顔は普段より幼く見える。それなのに嫌味なくらい整っていて綺麗だ。
ヨダレを垂らしている上に寝癖が凄いことになってはいるけれど。
「おい」
「…」
「じん」
「…ん」
囀ずるように名前を呼べば、布団の中で俺を抱きしめて眠る赤西の腕に少し力がこもる。
なんとなくそれに苛立って腹あたりを蹴り飛ばす。
「…ンン」
「…起きねえし」
眉間にシワがよっても綺麗な面構えが変わるわけではないからおもしろくない。
イタズラ心に火のついた俺は、赤西の頬を叩きながら少し横に伸ばした。
「…ん゛ー」
頬を弄っていた俺の手を振り払うと身をよじってまた寝始める。
何これ面白い。
「おきろよバカ」
完全に調子に乗った俺は、赤西の耳元に息を吹きかけるように囁いた。
瞬間、突然腕を引かれて体が傾いた。
「…ッ」
ベッドに打ちつけた背中が思いの外痛んで眉を寄せる。
こうしたであろう張本人をにらめば、今しがた寝ていたとは思えないくらい爽やかな表情をしていた。
ニヤニヤ笑ってて苛つくったらありゃしない。
起きあがろうと体を動かしたら、俺の腕をつかんでいた赤西の手が、しなやかに手首に移動して逆に押さえつけられる。
「…いてえんだよバカ」
馬乗りになって俺を見下ろしてくる赤西を再びにらんだ。
「──かずや」
寝起きのかすれた声で名前を呼ばれ、背筋が震える。
耳元に唇をよせられ、優しく息を吹きかけられた。それが嫌にくすぐったくて肩をすくめる。
そのまま俺の唇すれすれに唇をよせる赤西と目が合った。
「…」
「…」
俺の意志が赤西を欲しがらなくても、散々遊んできたこの体は素直に赤西を欲しがっている。
赤西の唇から漏れる吐息が唇にかかるたびに、体の奥がうずいた。
「あんまり俺で遊んでるとお仕置きしちゃうよ、かめちゃん」
「…バカ言ってんじゃねえよ」
顔を上げて笑った赤西は、昨日の赤西と何も変わらず無邪気なままだった。
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