GANTZ

□明日の3時間前
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「お前、髪染めんのやめれば」

何を突然、と振り返れば西が、バチバチと、ステルス解除して、私の目の前に現れた。
今回が私の人生4回目のミッションだけれど、4回ともこの西ってガキに邪魔されてる。
初めてのときは変な嘘をその場にいた全員に振りまいて、全滅させかけたし(私ともう一人残った奴がいたけど)、
その他はまあ、戦いの最中に邪魔というか、ちょっかいかけてきたりと、いちいち鬱陶しいガキだ。そして唯一、この奇怪な夜をわかってる人物、というわけだ。

「何突然」

「髪、チリチリだし」

「ッ、ていうかさ、それ、今言わなきゃだめなわけ」

そう、私は今まさに殺されかけて、殺そうとしている。星人と戦ってる(というよりは逃げてるんだけど)状態で、
いちいち言うことだろうか。髪なんて。

バッ、と星人がわけのわからない液体みたいなのを吐いたので、私は避ける。このゲロみたいなのいちいち出すから西がいうところの"送る用の銃"で、星人狙おうにも、いまいち狙いが定まらない。

西のほうをちらりと見ると、私の方を少し遠くから観戦してる。しね。
そして、また星人の方を振り向くと、上からゲロみたいな液体のが、勢いよく降ってきた。

「ッ」

怖くて目を瞑った。そんなのは自殺行為だろう。わかっているけど怖かった。

それからバンッ、と破裂音が連続して鳴って、私は目を開ける。何処もいたくなかったし、ゲロを被ってもいなかった。

「え」

髪が、短くなっていた。
触ると、まるで火で燃やしたかのように毛先がチリチリだ。

下をみると、道路が溶けていた。おそらく、ゲロが髪にかかって、髪を、溶かしたのだろう。
冷静になってその答えに行き着くと、バンッと、もう一度だけ破裂音がして、私と戦っていた星人が倒れた。
西が、ぶっ殺す銃で、星人を、やっつけてた。さっきの破裂音もきっと西だ。
星人のぼろぼろになった体の横に西は立って、私の方を見た。そして少し驚いた顔をして、口を開く。

「髪」

「あんたが、髪髪いうから」

「ふーん」

別に、西が髪のことを言い出したから髪に星人ゲロかかって短くなった、ってわけじゃないんだけど。
適当に八つ当たりすると西は、どうでもよさそうな返事をして、私のほうへ寄ってくる。
そして、短くなった私の髪を、撫でる。

「今までの頭悪そうなのより、いいじゃん」

「頭わる…、ッて」

西に言われたくないと思ったけれど、事実私は頭が悪いので、しょうがないな、と思った。

「頭悪いから、頭悪そうにして、頭悪い男釣るしかないんだよ」

西は、じいっと私をみて、「だから、死んだんだな」と言った。真顔でいうなよ、私だって死にたくて死んだんじゃない。
けれど確かに私は頭が悪いので、どこの誰かもはっきりしないオッサンの車に乗ってて、死んだ。


「頭悪いけど、助かッたし…次死んだら、ッてことで…いいだろ…別に」
「何が」
「本当に頭悪いッてこと」
「もう一回死んだら、完全に馬鹿?」
「うん」
「なんか、死にたくないな」
「死ななければいい」

死ななければいい、まさか西にそんなことを言われるとは。
痛んだ髪が風に吹かれた。

西の顔をみてたら、明日毛先を整えるついでに、黒染めしてもいいかな、と思った。



明日の3時間前

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