GANTZ
□恋のはじまり
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ガコンと音が鳴った。しゃがみ込んで自販機の取り出し口に手を突っ込むと、丁度後ろから「おい」と、声がした。
「お、西くん」
学校の帰りであろう制服の西くんが私を見下ろして、「邪魔」と、一言言った。
私はお目当てのペットボトルを取り出し口の中で掴むと、そのまま中に手をいれたまま、う〜んと、わざと唸って、ひっぱるような仕草をしてみせた。
「自販機に手、食べられちゃったよ〜。西くん、たすけてー」
ぬけなーい、と笑うと西くんが眉間に皺をよせて、「切り落としてやる」と、短めのナイフを取り出して、私の取り出し口にある腕を掴んだ。
私は慌ててそれを振り払った。
「西くん怖いよ!なんでそんなもん常備してんの」
「いいから早くそこどけって」
西くんは私を華麗にスルーして、自販機の前に立った。私は慌てて西くんから離れた。ナイフはもうポケットにしまったみたいだった。
ピ、と私と同じお茶を選んでいたのをみて、私は思わず「あ」と声をあげた。
「それだったら私のあげたのにー、同じの買っちゃうなんてなんかもったいない」
私を無視してごくごくとペットボトルに入ったお茶を飲む西くん。喉の動きがなんかいやらしい。
ごくごく西くんは一気に飲み干した。
「すげー。喉渇いてたんだね」
と、私は自分の分のお茶を飲む。空になったペットボトルをゴミ箱に捨てると、西くんは歩き出した。私も慌ててそれを追う。