GANTZ2

□シュレーディンガーの猫
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暗い実験室のようなところに私は連れてこられました。さらに西丈一郎は私を暗い箱の中へ閉じ込めます。それと同時にふたつのオブジェクトが私のそばに置かれます。それが何かは私にはわかりません。
箱の蓋が閉められるとき、彼は「目が、反射してんな」と嬉しそうに笑いました。ええ、きっと、反射する私の目はあなたを見据えていることでしょう。
私には何ひとつわかりません。箱の外からは何が見えるのでしょうか。

西丈一郎、あなたは私があなたを追いかけていたことを知っているのでしょうか。
私が産んだ子供たちは何匹かすぐにあなたに連れ去られました。彼はその子達をどうしたのでしょう。私は間違いなくあなたを見つめていました。
あなたが私を見つめていることも知っていました。いつか私があなたについていくこと、あなたが私を連れて行くことさえ、知っていました。
残った私の子供たちは成長して、私の元から離れました。私は声を出さないので、西丈一郎はそれを気に入って、喉をよく撫でました。
ただ、一度だけ彼の前で鳴いたことがあります。ある日彼は私に黒いオブジェクトを向けました。私がその場から彼のもとに寄れば、私のいたところに光と何か大きな音が鳴り、穴があきました。
そのときに一度だけ、小さく声を、出しました。

残念ながら私には人間の考えることはわかりません。なぜ彼がいつも一人なのか、寂しい目をしているのか。彼も私と同じだったら、彼がわたしのようだったら、私は彼とわかりあえたのでしょうか。

暗い部屋では2つのオブジェクトと私だけが存在します。
私は知っています。あなたが望むことを。

蓋をあけたとき、あなたはひとつの事実を知ることとなります。ただそれは、箱の中の私には既知のことなのです。
私は2つの状態で存在しますか。いいえ、そんなことはあり得ません。あなたが私をはじめて見つめたとき、そして私がその視線に気づいたときから、私はすでに死んでいたのです。

さようなら西丈一郎。あなたのほしいものを私はさしあげましょう。

シュレーディンガーの猫

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