企画

□僕の恋人を紹介します〜日吉ver.〜
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『日吉』

家の道場の見学中に静かに呼ばれる、俺の名前に頬が熱くなるのが分かった。

「…っ、なんだ」

槙原に呼ばれたのが恥ずかしくて、嬉しくて。
返答する声が小さくなってしまった。
それがまた恥ずかしくて、頬が更に熱くなる。

『日吉?声がよく聞こえない』

すっ、と自然な感じで俺の顔に槙原が男前な顔を近づけてくる。

うわわわわっ!ちかっ、近いだろ…!あ、睫毛長い。跡部部長より綺麗な目してるなぁ。

『…日吉?』

「はいっ?あっ…えっと…」

不思議そうな表情を浮かべて俺の顔を見てくる槙原は、俺と同い年で俺の恋人。
一応、槙原も氷帝生だ。

『大丈夫か?顔も赤いが、風邪?』

「か、風邪なんかじゃ…っ、ない…っ」

こつん、と額をくっ付けてくる槙原に俺の心臓は更にバクバクしてしまって。
槙原への返答もおかしくなってしまう。

いつもそうだ。
俺と同い年にも関わらず、鳳よりちょっぴり背が高くて、雰囲気が大人びてる槙原。
そんな彼に呼ばれるだけで俺の心臓は壊れてしまいそうな程にドキドキしてしまう。

「おい、槙原」

『はい。今行きます』

師範に呼ばれ、離れていく槙原の温度。
それがとても恋しい、だなんて。

「うぅ…っ、乙女か俺は」

ハァ、と一つため息を吐き、前髪を掻き上げる。
近くにあった鞄とテニスバッグを担いで、自室へと戻ろうと立ち上がった。

『日吉っ!』

道場に背を向けた時、また槙原に名前を呼ばれた。
しかも、珍しく大声を出して。

振り返って、槙原の方を見つめる。
困った様に眉を寄せて、考える様子を見せた後に、槙原は大きく口を動かした。

ま っ て て

確かに、そう口が動いた。
こくっ、と素直に頷くと、槙原は満足気に微笑んだ後、稽古へと戻って行った。

口元を手で押さえながら、ドタドタと慌ただしく自室へと向かう。
だって、あんな表情、反則だろ。
耳まで熱を持ってるのが分かって、更に顔が熱くなってしまった。

「おい、若!廊下は静かに…っておい!話をちゃんと…」

父上の怒鳴り声にも反応出来ずにスルー。

「まぁまぁ。若も恋をする年頃なんだから」

後ろで怒ってる父上を宥める母上の声が妙に綺麗で、勢いに任せて自室に入った後も何故か耳に残ってしまった。

「あ…っ、う、うぅ…。くそ男前め。くそっ」

体育座りで、足に真っ赤になった顔を埋めながら、槙原のあの笑顔を思い出していた。

本当に男前すぎてムカつく。くそ。ばかやろー。ああ、でも大好きだー。

「ふふ、ふへへへ」

あんなカッコいい奴が俺を好きでいてくてれる、なんて思ってしまって、口からだらしない笑い声が漏れてしまう。
ニヤけ顔を自覚しながら、とても幸せな気分を味わっていた。

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