novel2
□梅雨前線と君と出掛ける(日記の転載)
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「嗚呼…雨ですね」
梅雨前線と君と出掛ける
「梅雨か。そういえばもうそんな時期だったな」
「はい。これじゃあ出掛けられませんね…今日、特売日だったのに」
特売日に行かなくては食費は回らない。
そんな家計を支える若干16歳の少年は、
大黒柱である銀髪の男に視線を落とした。
「いやいや、そんな目で見詰められても困るからね銀さん。
いや寧ろ俺こそ梅雨の被害者だろ…!」
天然パーマである彼の髪は、
見事なまでにうねり曲がっていた。
「知りませんよ、そんなの。そもそも天パなんかで生まれてきたアンタが悪いんでしょうが」
「いや明らかに可笑しいよ新八君!好きで生まれたわけじゃないからね!お前みたいなサラサラストレートで生まれたかったからね銀さん!」
言いながらソファから起き上がり
玄関へと足を進める。
「しゃあねぇな…荷物持ってやっから、傘持てよ。お前」
珍しいことも有るんだなというように、狼狽する少年。
「洗濯物取り込んだら行きましょうね。」
しかし嬉しかったのか、
微笑みながら、作業に取り掛かったのだった。
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「銀さん、そっちの肩濡れてませんか?」
「この位濡れた内にゃ入んねぇよ。お前こそ大丈夫?」
「はい。平気です」
有難うございますと呟きながら、
傘を少し彼の方へと傾ける。
「本当に荷物を持ってくれると思ってませんでした」
「普段の行いか…」
「よく分かってるじゃないっスか」
揺れる買物袋。
中身は今晩のおかず、肉なし肉じゃがの材料。
「神楽ちゃん濡れてませんかね?」
「大丈夫だろ。アイツなら」
「ふふ、それもそうですよね」
肩が触れる程近い距離の中、
二人はゆっくりと足を置いて行く。
「たまには雨の日も好いもんだな」
「たまには、じゃないですよ。これから梅雨なんですから…」
「帰ったら神楽とてるてる坊主作ろう」
「聞いてんのか天パ」
「うわ…お前酷ッ」
「さ、早く帰りましょう」
「無視ですかコノヤロー」
不意に目が合って。思わず笑みが零れる。
梅雨だって君とだったら
晴天模様
幸せなのには変わりない
梅雨前線と君と出掛ける