nOvel

□手紙
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今夜で調度10日目だ。

野分は相変わらず忙しくて、俺だって仕事があった。

だから
仕方ないといえばそれで終わってしまうのだが、


やっぱり寂しいのは本当で…


メールで打つのは簡単だ。
自惚れじゃないが
あいつならすぐにでも帰って来るだろう。


でもそれじゃいけない。


野分を困らせるようなことはしたくないんだ。
こんなこと
普段は決して言う事が出来ないけれど…。





だから俺は、留学中だった野分からの手紙に返事を書くことにした。

俺も寂しいということを。



『親愛なる野分へ

拝啓 夏が恋しくなる季節となりましたが、如何お過ごしでしょうか。』




こういうとき、自分の職業病が嫌になる。

もっと自由口語詩みたいな手紙は書けないのか自分…


紙をクシャリと丸めた。



『野分へ贈る


夜が寂しいよ
お前がいないから

朝が恋しいよ
お前と会えるかもしれない

ずっと一緒にいたいのに
気持ちは焦るばかりで

来る筈のない着信を期待する

自分はこんな人間じゃなかったのに

気付けばいつもお前で一杯に


愛してるよ

言葉じゃ言えないから
せめて俺の好きな文学にこの想いをこめて


愛してる

誰よりも
愛してる

ずっと一緒でいられますように…』




そこまで書くと悩んでいたせいで日付はもうそろそろ変わりそうで…

俺は書きかけの侭眠りに就いてしまった。
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