nOvel

□寝顔
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「ただいま〜」



帰って来ると靴があったので。


いつもの無愛想な「おかえり」を聞く為に「ただいま」と声を出す。





「忍?」

しかし

暫く経っても返って来ない返事に少し戸惑う。


「ん…みや、ぎい」

見るとそこには
ソファで俺のシャツを抱き締めた侭、寝息をたてている忍が居た。

「忍…風邪引くぞ」

そう言いながら
柔らかい忍の髪を梳く。

いつもは意地を張っている忍だが、

寝ている時の寝顔は
まだ幼い子供の顔だ。

「みや、ぎ…」


俺の名を寝言で口にする忍。

一体どんな夢を見ているのやら…



でも何だか微笑ましい光景この上ない。

さっきまであった仕事後の気怠さは何処へやら。

弥が上にも幸せが込み上げてくる。


「有難うな。忍」

もう一度頭を軽く撫でると、寝室へと連れて行った。

まあ、
今でなくても朝起こせば差程問題はないだろう、


今日はゆっくりと
愛しい恋人の寝顔でも見ていたい気分だ。


「愛してるよ、忍」

軽く額に口付けを施して
常では言えない気持ちを言霊に。



俺は
夜が、
この時間が、

永遠で在ればいいなんて
柄でもなく心底願っていた。
 

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