novel2

□World in glass
1ページ/1ページ




眼鏡の枠の中
それが僕の
世界だった。


だから

その眼鏡の枠の中で
微笑みかけた銀さんも
僕の
世界だった。





World in glass



「新ちゃーん!茶ぁ!」

ジャンプから目を離さないで湯呑みを差し出す銀さん。

「はいはい…」
と、応えながら受け取る。

近くにいるのが当たり前過ぎて、
この気持ちに気が付くのが遅くなった。

僕は銀さんが好きだ。
尊敬でもあるし、恋心でもある。


「はい、どうぞ。熱いから気を付けて下さいよ?」

緑色の液体を受け渡す。

「なんかよォ、新八は嫁みてぇだよな」

自分は今、どんな顔をしているだろう…。
アンタの何気ない一言でこんなにも動揺してしまう自分が情けない…


「冗談言ってないで仕事して下さい」

期待しちゃ駄目だ。
銀さんはきっと僕をみてない。だからきっと、
この気持ちが知れたら関係が崩れてしまう。


一緒にいられなくなるくらいなら、
この気持ちを押し殺していた方がいい。

でも僕の世界には、
銀さんが輝いていた。

どんなにマダオでも、オッサンでも、

本当は強くて優しくて…
世界で一番格好良い。


「新八…どした?」

俯いていたら、下から顔を覗かれた。
慌てて視線を逸らす。

「何でもないですよ。そろそろ…夕飯作りますね」

立ち上がろうとした刹那、

「うわっ」

小さく零した驚嘆と共に
腕を引かれ躯が倒れる。



どさり


「え…銀さん、?」
何故か倒れた僕を受け止め、後ろから抱きしめる。
訳が解らず狼狽する。

「銀さん…?変ですよ、離して…っ」


伝わる温かい体温が悲しい。
銀さんは僕と同じ気持ちじゃないのに…何で。


「…泣くなよ」
耳元に吐息と共に耳朶を擽る振動。

泣くな…?
誰が…?


抱きしめる銀さんの腕が強く締まる。


「新八、好きだ」


泣いていたのは僕だった。



「僕も…アンタが好きです」





眼鏡の枠の中
それが僕の
世界だった。


だから

その眼鏡の枠の中で
微笑みかけた銀さんも
僕の
世界だった。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ