novel2

□俺達の関係
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12月。
師走というのは
年末、師でさえ忙しく走り回るという意味らしい。

そんなことは文学部助教授としては当たり前の知識だ。

それよりも、

何故俺は折角重なった野分との休日に、
草間園に来ているのかということの方が重要だ。


いや、別に草間園に来たくない訳じゃない。

ただ、
ちょっとだけ
本当にちょっとだけ

二人きりじゃないという事実に沈んでいた。


それに子供の相手は苦手だった。




「ひろおにいちゃん!あそぼっ」

まだ覚束ない足どりで俺の足元に歩みより、

手を延ばす女の子。

嗚呼、そんな輝く瞳で俺を見ないでくれ。


「おにいちゃん…あそんでくれないの?」

不安げに傾げる子供に向かって
俺は出来るだけ優しい笑顔で言った。


「お、お兄さんはね、今ちょっと野分お兄ちゃんにお話があるんだ…。だからちょっとごめんね?」


そう言うと、子供は

「うん…わかった!」
と言い、積木を取りに行った。



「野分…ちょっと、」

「あ、ヒロさん!何ですか?」

こいつ本当俺と正反対だよな…
回りには子供が一杯いる…

なんだか、
それを見ていると胸が痛い。

俺なんかじゃなくて、可愛い女の子と結ばれていたら
子供だって出来たのに…。

そんな風に思ってしまうのだ。


「ヒロさん?」

「ぎゃ!」

いきなり覗き込まれ、奇声を上げた。


「のわきにいちゃん〜あそんでよ〜」

いつまでも戻らない野分に痺れを切らした子供が
野分のエプロンを引っ張った。


「ごめんね?ちょっとヒロさんに用事が出来たから遊べないんだ…皆と遊んでて?」

「…はあい」

そういって戻っていく子供。
あ、なんか悪いことしたかも…。
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