バルカローレ ―水平線の狭間の物語―
□旅日誌 vol.2
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図書館でのひとコマ
静かな室内。紙とインクの匂い、そしてページを捲る音だけが空間を支配していた。
セクトルは素早く文章に目を通している。その横でリトルも本に目を落としていた。
無作為に集められた本から関係のありそうな箇所を探しあて、持参したメモ用紙を挟むリトル。
彼女の年では難解すぎるように見える本もあるが、手を止めることはない。なるほどセクトルの補佐は慣れているようだ。
リトルの挟んだメモ用紙を目印に、セクトルは黙々と本を読んでいく。リトルが示したページ以外を読むことは一度たりとしてない。
リトルの手伝いを無駄にしないようにという気遣いではない。ただ、その必要がないだけなのだ。
幼い少女が完璧に手伝いをやってのけるという光景は違和感があるが、いつも一緒にいる二人を知る者にとってはなぜか納得のいく光景だった。
二人のコンビネーションのおかけで、一山あった本が早々に片付く。
「リト、少し休んでもいいですよ」
「セルがやすむなら、やすむ」
「ふふ、では休憩しましょう」
持参していた水筒のお茶を飲み、ほっと一息。
これは二人にとっては馴染みのある時間。まるで学術船に戻ったかのような、日常の風景であった。
研究者としての人生を国家によって強制的に定められたセクトルだが、二人でこうしている時間は好ましいと感じていた。
空の国、見知らぬ図書館での、穏やかなひととき。
アメリアたちがバイト中の出来事。あまり描写しないが実は賢いリト。