お礼小説

□Happy Christmas!


「何でいまさらそんなことを訊くんだ?」

予定はないとは言っても、もう何年もクリスマスは2人で過ごしているのに、何故訊いてくるのか分からない。

「一番の理由は確認、かな?」

「確認?」

「予定がないってことは、24日の夜からいられるってことでしょ?」

にんまりと笑う碓氷を見て、改めてその意味に気付き顔に熱が集中する。
それこそいまさらと言われればそうなのだが恥ずかしさに慣れることはない。

「今からでも予定を入れることだってできるんだからな」

ムッとして睨みながら言ってみたが、碓氷は笑ったまま。

「そんな顔で睨んでも逆効果だってば」

すいっと近づくと軽いキスを落として囁く。

「じゃ、25日は俺の部屋でゆっくりしよ? もちろん前日からね」

「……ん…」

一緒にいたいと思っているのはお互いさま。
だからどんなに恥ずかしくても結局は碓氷の傍を選んでしまう。


そうして今年も2人でクリスマスを迎える。付き合ってからずっと繰り返されてきたように。


明け方近くにふと目醒めると、室内がやけに静かなことに気が付いた。
もしやと思い、私を抱きかかえる碓氷の腕を起こさないようにそっと外してベッドからでる。
窓に近づき外を見ると、思ったとおり雪景色が広がっていた。
昼になれば溶けてしまうくらいの積雪量だったが、周りの音を吸収しているかのように無音の世界がそこにあった。

「ホワイトクリスマスだったんだね」

いつの間にか碓氷が、背後から抱きついてきた。

「そういえば、雪のないクリスマスは“グリーンクリスマス”って言うんだって」

「ただのクリスマスじゃないのか?」

「南半球での言い方らしいよ。雪は降りようがないし、ホワイトクリスマスに対抗した呼び方なのかもね」

暫らく雪を眺めながら、いつか夏のクリスマスを体験しようよなどと喋っていた。

「そうだ。今年のプレゼント、おねだりしていい?」

「なんだよ、急に」

毎年、物欲の少ない碓氷に渡すプレゼントに悩むので、今年は事前に希望を訊いていた。しかし思い付かないと言うので、取り敢えず保留ということにしていたのだが、何を要求してくるのだろう…
少し不安に思いながらも「何が欲しいんだ?」と訊いてみた。

「これからは名前で呼んで?」

覗き込むように顔を向けてきた碓氷の口角は意地悪く上がっていたが、笑った目許は優しかった。

「碓氷って呼ばれるのも好きだけど、名前の方が嬉しい」

「〜〜〜っ、努力は…する…」

今までも何度か名前で呼ぼうとしたことはあったのだが、その都度得体の知れない恥ずかしさに負けて呼べずじまいだった。
それは今も同じで、ドキドキと煩い心臓を落ち着かせるようにゆっくり深呼吸をする。

「――メリークリスマス……拓海…」

「メリークリスマス、美咲」

首許に回されていた碓氷…拓海、の腕に赤くなった顔を隠すように埋めた。
拓海は隠れ切れていない目許に口付けると、「早く慣れてねv」と嬉しそうに言ってぎゅっと強く抱き締めた。


end.(2009.12.02)

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