Under

□君の指が追い詰める
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思えば、部屋を訪れたときから様子がおかしかった。
そのときに気付けるものだったのに。

俯いてソファに座る美咲の隣に腰を下ろした碓氷は、顔を上げさせようとして片手を伸ばした。
あと少しで頬に触れる、というところまで近づいた掌は、振り上げられた美咲の手に阻まれ動きを止める。
暫らくのあいだその体勢のまま動かずにいた2人だったが、やがて美咲がゆっくりと動きだした。

緩慢な動作で碓氷の方を向くと上げていた手を碓氷の首許に向ける。
細い指がネクタイの結び目にかかり音を立てずに解いていく。そうして外したネクタイで碓氷の両手首を頭の上で縛り上げた。

「――…鮎…沢…?」

思いがけない美咲の行動に、驚きを隠せない碓氷は戸惑いも露に問い掛ける。
しかし美咲は何も答えず、ただ無表情に碓氷を見ただけだった。

美咲は碓氷の肩を押して躯を倒させると、すっと手を動かしてワイシャツのボタンを外し始める。
いつもの美咲からは信じられないほどの無表情さで碓氷を見る美咲の瞳には、困惑顔の碓氷が映っていた。

すべてのボタンを外し終えシャツの合わせを大きく広げる。
美咲は現われた素肌に冷ややかな一瞥を向けると、横たわる碓氷に覆い被さるように身を乗り出した。
鎖骨に沿って指を滑らせる。
その指の触れ加減と動きに、碓氷の躯に焔が灯り始めた。

碓氷の肌に触れる指が掌に変わり、鎖骨から胸板、腹に脇へと移動していく。
美咲の手が碓氷の躯を撫でていくたびに碓氷に灯った焔は大きくなりその温度を上げる。そして中心が主張をし始めた。
そんな碓氷の様子を見る美咲は変わらず表情を無くしたままで、冷たく碓氷を見下ろしている。

――これは誰だろう
  鮎沢のはずなのに鮎沢じゃない
  こんな鮎沢は……知らない…――

碓氷は戸惑う心とは裏腹に、それでも目の前の美咲も確かに美咲なのだということが解って、惹かれているのを自覚した。

じっと美咲の瞳を見つめると、美咲の唇がゆっくりと弧を描く。
なにも付けていないのに妙に紅く色付いている唇が艶めかしい。
その唇に食らい付きたい衝動に駆られた碓氷は、身を起こして望みを果たそうとした。
しかし美咲はそれを許さずに、すっと身体を引いて距離をとる。
代わりに左手で碓氷の唇をなぞり、その口内に指を入れた。碓氷の舌が美咲の指を捉え蠢くと、美咲の口角が角度を増した。

美咲は右手で変わらず碓氷の躯を撫で、そのあとを唇で追い始めた。時折強く吸い付き、跡を残していく。
先行する手がベルトにかかり、躊躇いもなく弛める。気付いた碓氷が反応したが、美咲は構わずなかのモノに触れた。

指先で形を知らしめるように動く指。
それに反応して硬さを増していくのに気をよくしたのか、美咲の口からくすりと笑う声が漏れた。
そして笑みを湛えた唇が、躯のときと同じように指の後を追って碓氷に触れた。

「っちょ…っ?!」

慌てた碓氷が止めようとしたが、ちろちろと動く舌先の感触にゾクリとしたものが流れ、碓氷は息を詰めてソファにくずおれた。
美咲の舌と指で弄られて碓氷は限界間近にまで追いやられていたが、あと少しというところで美咲はインターバルを置き、なかなか碓氷を解放させなかった。
追い詰めては焦らし、焦らしてからまた追い詰めて、珍しくも顔を紅潮させ息を荒げている碓氷をちらりと見上げた美咲は、屹立したモノを下からゆっくりと舐め上げて咥えた。

「くっ…っ」

美咲の口内で果てた碓氷は浅く呼吸を繰り返し美咲を見据えた。
碓氷の視線に気付いた美咲は、口の端に溢れた液体を指で拭い舐めとるさまを碓氷に見せ付けるように見せる。
その姿に碓氷の欲情が再燃し、それを見てとった美咲は冷ややかに笑うと自分のシャツのボタンを外し始めた。
美咲はゆっくりと一枚一枚焦らすように衣服を脱いでいき下着姿になると碓氷に跨った。

両手で碓氷の顔を包み、口付ける。
触れるだけのキスを繰り返すと、美咲の舌が碓氷の唇をなぞり口内に侵入した。
ようやくの口付けに、碓氷は貪るように強く絡めて応える。その間に美咲は碓氷の腕の拘束を解いた。
碓氷は自由になった腕で美咲を抱きかかえ、さらに深く口付けを交わす。
時折漏れる吐息で、お互いに劣情が高まっているのが判り、口付けはさらに激しいものに変わっていく。
碓氷の手が美咲の下着にかかりずらすと、美咲のそこはすでに潤んでいた。
くちゅくちゅと碓氷の指が美咲を攻め立て、美咲は無意識に腰を動かした。

「…ふ…っぅん…っ」

色付く美咲の喘ぎ声を聞いて碓氷は体勢を入れ替えようとしたが、美咲がそれよりも先に動き自ら碓氷の怒張したモノを迎え入れた。

碓氷の上で乱れる美咲。
その姿だけでも碓氷を煽るのには充分だったが、見下ろしてくる美咲の視線や表情にさらに煽られ律動が激しくなっていき、やがて同時に絶頂を迎えた。


†††††


「…――って、夢のなかでミサちゃんに喰べられちゃったv」

楽しそうに言う碓氷とは対照的に、美咲は真っ赤になって硬直していた。

「もぅ、ミサちゃんってば大胆で俺、ドキドキしちゃった〜v だから今日はたぁ〜っぷりお返ししてあげるからね♪」

にっこりと笑って言うなり、碓氷は美咲をソファに押し倒した。
あまりの衝撃に未だ頭と身体が動かない美咲はなすがままにされ、気付いたときには与えられる快楽から逃れられないところまで追い詰められていて、お返しと称する碓氷に喰べられてしまっていた。


end.(2010.05.04)

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