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□ジンクス
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美咲は背後から抱きつく碓氷を退けようと、身体の前で組まれた腕に手をかけた。
力を入れるが、それ以上の力でさらに抱き締められて背中が碓氷と密着する。
碓氷は美咲の肩に顎を乗せるようにして耳許に顔を近付けると、2人しかいないのに声を潜めて囁いた。
「ねぇ…何かあった? 最近ピリピリしてるよ?」
「――今、この体勢に不満があるが?」
顔を背け不機嫌そうな声音だが、黒髪の間から覗く耳が赤くなっているのが見えて碓氷は口角を上げた。
「何? もっとくっついて欲しいの?」
「っ違うっ!!」
また腕を解こうとして美咲が暴れ始めたが、碓氷は軽く力を緩めただけに留めた。
「で? 何があったの?」
「…別に…ただ、ちょっと太ったみたいかなって…」
自己管理ができていなかった自分に腹を立てていただけだと、美咲は憮然としている。
碓氷は美咲らしい答えに納得はしたものの、腑に落ちないこともあった。
「…太った? どこが?」
見た目には全く判らないし、今だってこうして抱いている感触に違和感はない。
「―…服が少しキツクなってたんだよ…」
サイズが変わると出費が増える…と、美咲が憤慨している一番の理由はそれらしい。
「それってさー…」
ある理由に思い至った碓氷は確かめるべく行動を起こした。
「太ったというより育ったんだよ、胸がv」
言いながら美咲の両の膨らみを両手で包むように触る。
「最初の頃は掌に収まるくらいだったのに、今は余るほどだし〜v」
「っ〜〜〜っど、どこ触ってんだよっっ!! あほっ!」
美咲の怒声にも負けず、碓氷は胸を触り続ける。ご丁寧にも腕をクロスさせて抱き締めた格好のままで、美咲の動きを抑制していた。
「揉むと大きくなるってジンクス、本当だったんだね〜」
楽しそうにというか嬉しそうにというか…そんな笑顔の碓氷が美咲の首筋に顔を近付け唇を滑らせた。
ビクリと美咲の身体が一瞬硬直した隙にリボンの留め金を外して襟元を緩める。
「やっぱり、ちゃんと見て確認したいから…ね」
怒鳴られる前に美咲の口を塞ぎ、そのままゆっくりと押し倒した。
数日後。
「ミサちゃんにプレゼントv」
渡されたお茶を飲んでいるときに何の前触れもなく、満面の笑顔でいきなり渡された袋を思わず受け取ってしまった美咲は、促されて訝しみつつ袋の中を見た。
「俺の好みで選んだけど、絶対似合うから着て見せてねv あ、サイズは今の大きさに合わせたから」
そこには…ふんだんにレースが使われたものやフリルが付いたもの、シンプルなデザインのものから布面積が小さいものまで、多種多様な下着がセットで入っていた。
「〜〜〜〜っふ、ふざけんなっ!! この変態ぃーっ!!」
真っ赤になった美咲は碓氷の顔面に叩きつけるように袋を投げた。
しかし美咲の抵抗もむなしく、結局碓氷の手によって碓氷セレクトの下着を着せられることになる…
end.(2009.11.24)