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「立候補者が1人だと無投票選挙になるからな…」

「……なるほど。でもまた再選したら? 3年で会長やるのは大変だよ?」

「大変なのは今までだって同じだ。3年でもやれなくはないさ。…それに、私が再選するということは、まだ引き継ぐわけにはいかないってことだろう?」

苦笑しながら話す美咲に、碓氷は背後から腕を伸ばす。美咲の腹の前で自らの両手を組んで、腕の中に閉じ込める。

「何、してる…っ」

「疲れたから――補給させてv」

美咲のこめかみ付近にキスを落としながら囁く。
何のっ?! ってか何をするっ! と喚きながらも逃げない美咲に笑みがこぼれる。

「…何笑ってんだよ…っ」

赤くなりながらも強がる美咲に益々笑みを深くする碓氷。

「鮎沢ならまた再選するだろうな〜って思って」

そう、さっきのことでも分かる。あの3年達に向けた笑顔は、それはそれは可愛らしく、鬼会長としてしか見えていなかった男子達に衝撃を与えた。
オチた男共が確実にいる。
それに、半年前再選してからの美咲は以前から比べるとかなり“鬼会長ぶり”がなりを潜めており、自然、会長としての実績を認めた男子生徒の支持も増えていた。

“会長”としての鮎沢を認める奴が増えるのはいいけれど、手出ししようとするヤツが増えるのはな…
新入生が入ってくる前に、まず在校生をシメておくか。

正直碓氷は、あんな笑顔の美咲を他の奴らに知られたことが面白くなく、見た奴らの記憶を消してやりたいと本気で思っていた。
まぁ…誰のものか思い知らせてやればいいよね…
碓氷はにっこりと笑った顔を作りながら心の中で黒い予定をたてる。

そんなことには全く気が付かない美咲は、そろそろ帰りたいから放せ、と碓氷の手を叩いた。

「じゃ帰ろっか。送るよ」

「は? 何で?」

「花、大変でしょ。手伝うよv」

言うが早いか、碓氷は机の上に置いてあった花束を半分持つと、生徒会室を出ていこうとする。慌てて美咲が残りを持って後を追う。
追い付いた美咲は、少し言いにくそうに碓氷を見上げると

「…ありがとう。貰ったのは嬉しいんだが、正直…持ちきれなくて困ってたから、助かる…」

ぼそっとお礼を言った。

「気にしなくていいよ。お陰で一緒に帰れるんだし〜v」

「っ…言ってろ…っ」

言い合いながら、陽が落ち始めて朱に染まりつつある家路を二人並んで帰っていった。




一ヵ月後。
新入生達が高校生活に慣れ始めたころ。新たな生徒会メンバーが活動を開始した。その頂点、つまり会長には…

今までと同じ美咲の姿。
そして美咲の側に碓氷が居る光景も変わりなく。

まだまだ、会長とメイドの二重生活は終わりそうにない。




……。

…碓氷と言えば、相も変わらず男子生徒達に一目置かれていた。
が。
一部の生徒に、これ以上ないくらい恐れられるようになっていたのは…まぁ、あくまでも余談である。


end.(2009.07.06)
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