Novel
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おめでとうございます――
そう締め括った美咲の前に、花束を持った数人の3年女子がやってきた。
「鮎沢さん。貴女が会長になってくれたお陰で、最後の一年、学校が楽しかったわ。ありがとうv」
私達の感謝の気持ち、と花束を渡される。
抱えきれないほどの花束に、最初は驚いていた美咲だったが
「お礼を言うのは私のほうです。私が会長をやってこれたのも、先輩方が一番に協力してくれたお陰ですから」
いつの間にか壇下には3年の女子全員が集まっていて、美咲はその全員に語り掛けるように返事をした。
「…少しでも、学校が過ごしやすくなっていましたか…?」
遠慮がちな問いかけに
「もちろんよ!」
「さっきも言ったけど、1・2年の時と比べてホントに楽しかった」
「卒業するのが少し寂しいくらい…」
「男子達にもちょっとだけ、言いたいこと言えるようにもなったしね」
「本当にありがとう」
次々と卒業生達が答える。
それなら…
「良かった――」
美咲は安堵して嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
っっ?! か、会長が笑っ…
その笑顔にその場にいた大多数の生徒(女子含む)が赤面し、1人の男子生徒が不機嫌になった。
見回りを終えた美咲は1人、帰っていく生徒達の姿を生徒会室の窓から見ていた。
脳裏に浮かぶのは先程の卒業生達の言葉。
“女子が過ごしやすいように”星華の風紀改善に取り組んできた美咲にとって何より嬉しい言葉だった。これで女子の新入生が多く入学してくれれば。
この一年、やれることはやってきた。次期に継げるよう準備も進めてきた。あとは次の選挙で、託せる者に引き継ぐ――
はた、と半年前の選挙を思い出す。あの時は1年が対抗してきたお陰で(多少暴走していた感は否めないが)選挙に関心をもつ生徒が増えたが、次はどうだろうか。
ふむ。と小さな決意をした瞬間を見計らったかのようにドアが開いて1人の生徒が入ってきた。
「…まだ残ってたんだ?」
「碓氷。お前こそまだ帰ってなかったのか…って、どうかしたのか?」
何だか疲れていないか? ややげんなりしていた様子の碓氷を見て声を掛ける。
「ちょっとね…大したことないよ。それより何してたの?」
「いや、特に何も…。ちょっと来月のことを考えていただけで…」
「女子が多く入ってくるかな、とか?」
からかうような笑みを浮かべて窓辺の美咲に近づく。
「…ああ。そうなれば、会長をやってきたかいがあるってものだしな」
窓の方を向いて言ったのに
「淋しい? 会長でなくなるの」
何でコイツにはお見通しなんだろうか……やっぱり宇宙人だからだな、とこっそり思ったことがばれないように、にっこり笑ってやった。
「まぁ…少しはな。だが、次の選挙で立候補者が1人しかいなかったら、また立候補するつもりだ」
この言葉に驚いた碓氷は、僅かに見開いた目を美咲に向けたが、何も言わず次の言葉を待った。