捧物

□内緒のハナシ続き
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「会長、こっち終わりました」

「ああ、お疲れ。もう帰っていいぞ」

「…お先に失礼しま〜す」

仕事を終えたメンバーが次々と帰っていく。私も今チェックしている1枚で終わるから、もうすぐ帰れるだろう。
さっさと片付けてしまおうと書類に目を戻した時に、最後の奴が出て行きざまに一言言った。
意味が分からず反射的に聞き返したが、言った人物はすでにいなかった。

どーいう意味だ…? と首を傾げていると、横からくすっと笑い声が聞こえた。
横目で睨んだが効果はなく、立ち上がった碓氷が近づいてきた。

「もう30分経つよ? 終わった?」

「後少しだ。だから邪魔するな」

「ゆっくりしてもいいよ? さっきの奴もそう言ってたし」

最後に出ていった奴はこう言っていた、“ごゆっくり〜…”と。

「だから、なんでゆっくりしなきゃならないんだよ」

早く帰ろうとしているのに。

「つまり、こーいうこと」

言うなり顎を掬い取られてキスされた。時間を掛けた深い口付けに、身体中に熱が生じてくる。

「…30分過ぎたから…お仕置き」

一度唇を離して笑って言うと、今度もまた長く甘いキスが続く。

ごゆっくりって…それって…気付かれているってことじゃあ…

キスの間思考力が低下している頭で、それでも正解に辿り着いたのは流石といえる。ただし、遅すぎではあったが。

翌日から美咲は、極力碓氷に近付かないよう逃げ回った。
それが次の“お仕置き”の原因になるとも気付かずに…


end.(2009.11.27)

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