捧物

□避暑地(7月27日)
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オチはありません…←
そして捏造が大量に…www

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雲ひとつなく晴れ渡っている青空に負けじと、その碧さを広げた枝一杯に茂らせた葉っぱで主張する樹々。時折吹く風が梢を揺らし、その下の道を歩く2人の少女に涼を運んだ。

「んー。風が気持ちいい〜」

少し広めのツバの帽子を被り、長いストレートの髪を風に靡かせながら良が連れの少女に振り返る。

「本当。やっぱり高原は涼しいわねぇ」

良の隣に並んで日傘を差して歩く薫子がにこやかに相槌を打った。

「それにしても驚いたよ〜薫子さんも一緒だなんてっ」

「うふふv 私もご招待されたのよv 人数が多いほうが楽しいからって」

以前良は伯王の姉弟である碧織衣と理皇に拉致られて、神澤家のプライベートビーチがある別荘に連れて行かれたことがある。その時気に入られたのかどうか、「海ときたら次は山でしょう!」という理由で、今度は高原にある別荘に連行されていた。
もちろん今回も、お使いに行く途中で碧織衣と理皇の乗った車に拉致られ、伯王が碧織衣からのFAXで慌てて別荘に飛び込んできたという流れ。当然その後から庵と隼人も姿を現した。ただ今回は薫子も2人と一緒にやって来ていたのだった。
前回の海のときは、偶然にも近くのホテルに来ていた薫子が良に会うために神澤家の別荘を訪れた。そのときに碧織衣と面識を持ったのだが、どうやら薫子の発行している『黒燕画報』や個人的に把握しているBクラス生のスケジュール情報等々が碧織衣のお気に召したらしく、今回の招待に繋がったらしい。

「今回もお休みのときに皆に会えて嬉しい! 目一杯楽しもうね、薫子さんっ」

にぱっと満面の笑顔で答えた良は、まじまじと薫子を見た。
白いレースの日傘を差す薫子の姿は、いかにもなお嬢様姿で、思わず良はほぅ…っと感嘆の息を漏らす。
“やっぱり似合うなぁ…って、薫子さんはお嬢様なんだし当然かぁ”
いつもにこにこと笑みを絶やさない薫子は、良が子供の頃からイメージする“お嬢様”にぴったりなのである。良が通う双星館学園、しかも在籍するLクラスは良家の子女が集うクラスであるのでお嬢様だらけで、むしろ“らしくない”自分が目立つほど。そのなかでも薫子は仲が良いということを差し引いても、良にとって1番のお嬢様なのであった。
その薫子が“高原”で“レースの日傘”を差している姿が余りにもハマっているため、良のテンションはいつも以上にアップしていた。涼やかな淡いグリーンのワンピースがまた似合っているのも理由のひとつだろう。
散策と称してこうして別荘の周辺を散歩しているだけでも楽しい。うきうきと歩みを進める良に薫子が遠慮がちに問い掛けた。

「でも…いいの? 良ちゃん。伯王さんと一緒じゃなくて」

いつもなら良の傍を離れない伯王なのだが今はいない。
隙あらば勉強から逃げ出そうとする理皇のお目付け役として、付きっきりで宿題を見ているのだった。もちろん理皇が我儘を言ったせいもあるのだけれど、理皇に付いていてあげるように後押しをしたのは良。一人っ子の良は“兄に甘える弟”の理皇が可愛くて仕方がなく、また“兄”の顔をする伯王も好きなのだった。
にっこりと笑顔で良に言われてしまった上に碧織衣からも追い討ちがかかってしまっては伯王に断る術はない。せめて庵と隼人の2人、もしくはどちらか1人と一緒にいるようにさせたかったのだが、2人は碧織衣の用事を言い付けられてしまい無理だった。
結果、別荘が見える範囲までにすること、とキツク言い含められて薫子と散歩にでてきていた。

「うんっまだ時間はあるし、理皇くんの宿題が終わったほうが楽しめるでしょ? 海のときみたいなことが起こっても大変だし」

「まぁ、確かにあの時は大変だったものね」

苦笑しながら同意した薫子は「でもそろそろ戻りましょう? 少し別荘から離れてしまったみたい」と提案した。
薫子の言葉に良は慌てて周りを見渡す。確かに目に見える範囲に別荘は見えない。
あちゃーと呟いた良はちらりと薫子を窺い見る。

「…薫子さん…言い付けを破ったこと…伯王には内緒ね…?」

悪戯を持ち掛けるような表情の良に、薫子は一瞬目を見開いたがすぐにくすくすと楽しそうに笑い出した。

「ええ。内緒、ね?」

顔を見合わせて笑いながら来た道を戻る2人の背中を押すように風が吹き抜けていく。ざわざわと葉が鳴る音が2人の笑い声と重なり、これから始まる休日の楽しさを盛り上げているようだった。


end.(2010.07.27)

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薫子さんを書いてみたかったんです。。。
薫子さん大好きv あの『黒燕画報』にかける情熱は他人事とは思えない…(笑)

お目汚しにて失礼いたしましたー。。。鷹羽


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