宝物
□もっと(2009.09.01)
1ページ/2ページ
あと少しの時間でこの退屈な時間が終わり彼女に会える。緩む表情を知られないように気をつけながら時計の針を気にしていた。
今日は確か生徒会の仕事もバイトもなかったはず。
彼女のスケジュールを思い出しこの後の時間をどうか自分にと願う。
期待と不安が入り混じりこの僅かな時間がやけに長く感じる。
早く美咲に会いたい…
クラスが同じだったらと何度考えた事か…。
あまり多くを望み過ぎると『もっと』と更に欲が出て彼女を縛り付けてしまう。
もっと、もっと…きりがない欲望が俺の奥底にある事は秘密にしておきたい。彼女が怖がってしまうかもしれないから。
終了のチャイムが鳴りつい口元が緩みクラスメートの武沢に「何かいい事でもあるのか?」なんて言われた。
「そうかもね」と、はぐらかしたが一度緩んだ表情はすぐには戻らず珍しく少し頬が熱かった。
彼女のクラスの前をゆっくり歩くと目線があった。真っ赤になってすぐに目線を逸らされたが小さな合図があった。
『待ってろ』
他の人に見つからないように小さく人差し指で生徒会室がある方向を指差す無言の合図。
『了解』
と小さく頷いた。