赤の記憶
□プロローグ
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暗闇の中、スライドに映された画面が、淡い光を放つ。
スクリーンいっぱいに並んだ文字の羅列や表を見ながら、男は手にしたグラスを口に運んだ。青白く照らされた男の顔は、画面のただ一点を見つめている。
「こんなところに居たのか」
「ああ。……なあ、こいつら面白いと思わないか?」
「同感だ。こうも偏りが出るとはな」
「――やはり、人間は面白い」
「悪趣味な奴……」
音も立てずに入って来た男に向かって、男は背を向けたままニヤリと口角を上げた。
呆れ声が返ってくるのも構わず、男は嫌な笑みを浮かべ続ける。
部屋は作業机やパソコン、資料の束が所狭しと置かれていた。きちんと整頓されているにもかかわらず、圧迫感を感じる空間だ。
そんな部屋に、二人は言葉少なく立っていた。
「次の標的は何処だ?」
「さーな。ま、俺としてはあいつらのいる塊が良いがな」
「そう言うと思ったぜ」
「どーせなら、楽しみたいだろ?」
「ふんっ……そうだな」
ニヤリと笑みを浮かべて顔を見合わせると、二人の男たちは揃って部屋を出た。
残された部屋には、付けっぱなしのパソコンの画面が、淡く青白い光を放って、そこに映る字を浮かび上がらせていた。
線を引かれたもの、赤く記されたもの、黒く塗りつぶされたもの……――。
様々な表記をされた、膨大な数の人名を――――。
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