修一・裕次

□氷の微笑
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はぁ〜 気の重い…


退屈な時間が
    やっと終わる…。






父のたっての頼みで

(可愛い一人娘と
     自慢したら…
何故か…デ−トする事に
   なっちゃった…と

可愛く笑う父を前に…
    断れなかった… )





取引先のご子息と
     オペラ観劇の後

遅い夕食を
このホテルのレストランで
済ませた後…




彼に 腕を掴まれ

「以前、パ−ティ−で

 ヒロインさんを
    お見かけして…

 一目惚れだったんです。


 今日は このまま…
     帰したくたい…

 …せめて もう少し…」


と頬を染めて囁かれた…。




『!?   えっ…?  』

私は
何と言ったらいいのか…
戸惑っていると






「はい! そこまで!!!!!」


突然


彼とは反対の手首を掴まれ


強く後ろに引っ張られ… 





誰かの胸へ抱き留められる




『!? 裕次お兄ちゃん!』






「もう 時間が遅いからね
 ここで

 デ−トは終了ね? 」


完璧な王子様 スマイルで

にこやかに
相手にそう宣言すると





私の手をひいて
早足でサッサと歩き出す…







だけど 私は知っている…


あの完璧で 隙のない
王子様スマイルは…






裕次が
完全にブチ切れた時に

繰り出されるもの
   だということ…を。







『ゆ 裕次お兄ちゃん…!?
 ……怒っ…てる…の?』


…恐る恐る 尋ねてみる。






「……ゆうじ だろ? 」


ひどく低く 硬い声で
一言だけ

うつ向いて発する裕次…






前髪で 顔が半分隠れ
 表情が 伺い知れない…





……怖い…
   完全に怒っている。





裕次は 滅多に怒らない分

怒った時は 激しい…




しかも 絶対に怒鳴らない




静かな怒りな分 尚更……






エレベーターは
何故か下には向かわずに…




上昇し始める。









『裕次…
   何処に行く…の?』


やっと 一言だけ 言えた…




裕次は掴んでいた手を離し

凍てつく瞳で私を一瞥して




静かにエレベーターの壁に
私の身体を押し付けた。





私の髪を 一房掴むと
キスを落とし




「スィ−ト ル−ム。


 逃げないよね?  」


コクリと
頷く事しか出来ない


私を見て 一瞬甘く笑った




だけど…
視線が ドレスに落ちると




また冴えた笑みを浮かべ…



噛みつくようなキスを
私に…







エレベーターの扉が開くと




裕次は
私の足元を浚い 抱えると




スィ−ト ル−ムへと
運んでいった。













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