Treasure Box.

□進め!ラブラブバカッポー
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「……修ちゃん?」


「なんだいかんな?」


「……呼んでみただけ」


「ははは。かんなはおちゃめさんだなぁ」


「えへへ」


「はははは」






 砂糖が溶け残る程甘い紅茶よりもさらにベタ甘な会話が繰り広げられているのは、西園寺家のリビングだった。



 しかも呼んだ方は呼ばれた方の膝の上。

 後ろから抱きしめたまま二人でテレビを見ている……のかと思いきや、










「……しゅ・う・ちゃん」


「なんだいかんな?」


「…………呼んでみたかっただけ」






 上目遣いで見上げる膝の上の彼女に修一は、










「ははは。そんな可愛いこと言っちゃう口はふさいじゃうよ?」


「やだぁ〜」






 …………テレビそっちのけでイチャこいているようだった。






 修一とかんなは、ラブラブバカッポー。
 こんなやりとりは日常茶飯事だ。


 目に余る二人のやりとりに、最初は怒ったり呆れたり苦言を呈したりしていた弟たちも、最近ではすっかりあきらめモード。

 二人が少々イチャイチャしようがラブラブしてようが、菩薩のように平穏な心を保てるようになっていた。










 ……だが。










「ちょっと二人っきりで出かけてくるよ。
ああ、一週間位帰らないからヨロシク」










 さも当然のような修一のいきなり発言に、その場にいた全員がフリーズした。






「ちょっと待ってよ修兄ちゃん!」



 珍しく一番に声を上げた瞬に修一はキッパリ一言、






「駄目だ待たない。」






「出かけるって……どこへ?」


「ははは。秘密だ」



 問いかけた雅季のセリフは華麗にスルー。






「待てよ! もうじきかんなの誕生日なんだから……」


「……だからマイスイートハートを独り占めするんだろう?」



 雅弥には、威張りくさって言い切った。






「だから! 俺たちも一緒に祝いた……」


「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて〇〇〇〇〇……なんてね」


 頑張って言い募ろうとした裕次には、黒い笑みを浮かべてみせた。






「……お嬢様の誕生パーティーはどうなさいます?」


「中止だ中止。招待客には、かんなは病気だとか言っておけ。
ま、かんなは既に『恋の病』にかかっちゃってるけどな♪」


「もう……修ちゃんてば……」







 そのセリフにうっとりと頬を染めるかんな。

 そんな彼女をお姫様抱っこで抱き上げると、修一は彼女の耳元で甘く囁いた。










「……さあかんな。
もうこんなところに用はない。誰にも邪魔されないところへ行こう!」


「……ステキ! 愛の逃避行ね!」



 自分を抱き上げた修一の首に腕を回し……そのまま抱きつくかんな。






「そうだよかんな。
いざゆかん、二人だけの世界へ!」


「ああ……素敵……」





 そのまま二人はリビングを出ていった。



 そしてリビングに取り残された五人。

 あのバカッポーには何を言っても無意味なのだと、改めて思い知らされた。


 そして、






(((((彼女欲しい……)))))



 独り身の淋しさに悲しくなったのだったとさ。

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