Treasure Box.
□ウワサのカノジョ
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修一様にカノジョができたらしい。
……確かに修一様は、以前よりもずっと、オトコの責任感というか、包容力がアップしているというか、落ち着いてきている気はする。
ウワサのカノジョに、弟たちは興味津々。
「ねえねえ兄さん、どんなコなの?」
「……修一兄さんのおめがねにかなうなんて、ある意味スゴいヒトだよね」
「なーなーウチに連れてきてよ。俺見たい!」
「僕も……会ってみたいなあ……」
かく言う私も、修一様の親友として、彼のハートをさらった恋泥棒には興味があった。
カノジョの話はほとんどしない修一様だったが、弟たちのあまりのしつこさに根負けしたか、ある日とうとうおっしゃった。
「……次の休みに、彼女をうちに連れてきますから!」
その一言に西園寺家が揺れたのは……
言うまでもなかった。
・・・・・・・・・
そして当日。
西園寺家は(なんだか)物々しい雰囲気に満ちていた。
休みの日でも試合だ練習だでろくに家にいらっしゃらない雅弥様ですら、きっちり家にいらっしゃる。
……どうやら今日の練習は、部長命令でお休みになさったらしい。
ご自分で彼女を迎えに行っていた修一様が、ようやく戻っていらっしゃった。
私は私的好奇心を押し隠し、執事の笑顔でいつものようにお出迎え。
「お帰りなさいませ、修一様」
「ただいま、要君」
そんないつもの修一様の声にかぶさるようにして。
「こんにちわぁ〜!!」
やたら元気な声がした。
(…………えっ?)
修一様の隣に立っているのは、修一様の胸元くらいまでしか背がない小柄な少女……
そう『少女』。
雅季様や雅弥様と同じ位か……下手をすればもっと幼いか。
……この方がカノジョだとすれば……
…………修一……コレ……犯罪に近くないか……?
そんな思いはきっちり包み隠して、私は彼女ににっこり微笑んだ。
「いらっしゃいませ、お嬢様」
「はじめまして!
私が、しゅーちゃんのカノジョのかんなで〜す!」
…………しゅーちゃんとな?
威勢のよさにたじろぎながら、心の中で突っ込んだ。
ふと修一様の方を見ると、照れるか恥ずかしがるかと思った修一様は、ものすごく嬉しそうにニコニコしていらして。
……なんとも調子が狂わされる。
ま……まあ年の差があるにしろ、幼カノジョにしろ、彼女……かんな様が修一様のカノジョであることは間違いなさそうだ。
いろんな意味で、すごく意表をついたカノジョではあるけれど。
指と指を絡めるカップルつなぎをして廊下を歩く二人の、その後をついて歩きながら、私はそんなことを思ったのだった……。