†D.Gray-man【短編】

□時にきっかけは思いがけないトコロから
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【時にきっかけは思いがけないトコロから】



「おい、ティムキャンピー?まったく・・・ティムの奴、どこ行ったんだ?」


黒の教団に入団してから、もう半月ほどが過ぎた。
ここでの生活にもだいぶ慣れたと思う。

でも、一つだけ不自由な事がある。
それは・・・


「・・・あれ。ここドコだ?」


教団が広すぎるため、僕はたびたび迷子になっていた。
ティムが居れば迷う事もないけれど、時々こうして勝手に飛んで行ったティムを探し出すのは一苦労だった。
もともと方向には、ほんの少しだけ(ココ強調!)弱い自覚はあるけど…


「まいったな・・・むやみに歩き回るんじゃなかった・・・」


今度、コムイさんに頼んで教団の無線ゴーレムでも持たせてもらおうか。
僕が一人で途方に暮れていると、廊下の向こうから見知った人物が歩いてきた。

あの金髪。
遠くからでも誰だか分かってしまった。


「よっ、少年。ずいぶん暇してそうじゃない?」
「・・・ミリア。何してるんですか?こんなトコで」


彼女は両手に本や何かの資料を大量に抱えていた。
任務の時にエクソシストが着る団服ではなく、科学班が着ているような白衣を羽織っている。
サイズが合っていないのか、袖をまくって短くしてあった。


「科学班に頼まれた資料を取りに来たの。アレンは何してたの?あんまりウロウロしてると、また迷子になっちゃうよ?」


彼女は笑いながら言う。たぶん冗談のつもりだろうけど・・・



「あははは・・・」

「・・・あれ?もしかして、既に迷子?」

「ティムを探しているうちに迷っちゃって・・・」

「ティムキャンピー?ティムならココに居るよ」



彼女の視線は白衣のポケットに向けられている。
僕もつられて、ポケットへと視線を移した。


「中に入ってるから開けてみて」


開けてみてって言われても…
少し気が引けるけど、彼女は両手がふさがってるし…仕方ないか。
言われるままに、ポケットの端を指でつまんで中を覗き込んでみた。


「…ティム。お前、こんなトコで何やってるんだ?」


ミリアの言った通り、ポケットの中には大人しくしているティムの姿があった。
…どうりで捜しても見つからない訳だ。



「さっき科学班の前で会ったの。お腹空いてるみたいだからキャンディーあげたよ」

「あ…そうなんですか?」



ティムに食事は必要ないけど、ミリアがニコニコしながら言うから何も言わないでおいた。



「本当はゴーレムだから食べ物は必要ないんだけどね」



ミリアが呟いた。
…知ってたんだ?


「途中まで送ろうか?」


僕が何も言わないうちに再びミリアが口を開いた。
ティムは見つかったから、帰れない事もないけれど…


「じゃあ、お願いします。あの、それ運ぶの手伝いますよ」


ミリアが両手に抱えている大量の荷物が気になった。

僕が言うと、彼女は「ありがとう」と言って微笑んだ。
その柔らかい笑顔につられて、僕も思わず笑顔になる。

荷物を半分くらい分けてもらって、再び歩き出す。
本当は、もう少し持てたけど、ミリアが半分しか持たせてくれなかった。


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