DRRR! !【外伝】

□陸<完>
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♂♀




こうして始まったウノ大会、第二回戦。


一回戦目は新羅にチームを組んでもらっていた私も、今回は一人での参戦となる。
隣でうつ伏せに寝転んで、勝負の行方を見守っている臨也が、時折、横から口出しアドバイスを入れてくれるけれど、戦況はいささか私に不利な状態だ。 



「あーあ。ほら、さっきそのカード出しとけばよかったのに」


「…さっき言ってよ」


「俺は傍観してるだけだからさ。頑張りなよ。ここで応援してるから」



そう言うと、臨也はまるで他人事だと言う様に、お菓子を口に放り込んだ。
ま、他人事なんだけどさ。
そうこうしている間にも、私の次にカードを出した新羅が「ウノ」と宣言した。


シズちゃんは出せる手札が無いようで、カードの山から一枚を引き、順番は私へと回ってきた。
私の出すカードによっては新羅が上がれてしまう訳だけど…



「ふーん、なるほど」



身体を起こして新羅の手札を覗きに行った臨也が、戻って来ると私の手の中のカードを眺めながら、楽しそうに呟いた。



「そんな顔で見ても教えないよ?ここは運命だと思って、素直に自分のコレだと思ったカードを出しなよ」



ちらりと臨也を振り返ると、そんな返答が返ってきた。
仕方ない。
私が手札から一枚のカードを出すと、すかさず新羅がその上に自分の手の内にあったカードを重ねた。



「上がりー!悪いね、二人とも」



にっこりと笑顔を浮かべて、新羅が楽しそうに言い放つ。



「ちッ…仕方ねえ。姫乃。悪いが手は抜かねぇぞ」


「も、もちろん。勝負は正々堂々やらなきゃ」



残されたシズちゃんと私が勝負を再開しようとすると、「はい、そこまで」と新羅が口を挟んだ。



「え、何で?まだ罰ゲームする人決まってないよ?」


「だって。今回の罰ゲームは二人でするやつだから」



私の疑問に答えると、新羅が布団の上に置いてあったお菓子の箱からポッキーを一本取り出した。
そして、それを私の口もとへと向ける。



「噛まないように端っこだけ咥えて」


「…こう?」


「うん。そうそう」



言われるままにポッキーを咥えると、そのままキープしている様に命じられた。
そして新羅は、今度はシズちゃんへと視線を向ける。



「じゃ、負けた二人には罰ゲームで『ポッキーゲーム』してもらうよ。それじゃ、静雄は反対側から食べて」


「あ゛?何をだよ」



訳が分からないといった様子のシズちゃんを、傍観している臨也は面白そうにクスクスと笑っている。
新羅は小さく息を吐き出してから、再度、シズちゃんへと声を掛けた。



「だから、姫乃が咥えてるポッキーだよ。そういうゲームでしょ」


「…は?何が、でしょだこのバカ。何で、んな事しなきゃなんねぇんだよ」


「罰ゲームだから」



平然と答える新羅に、シズちゃんは無言で片腕を伸ばした。
そしてガシッと新羅の頭を掴むと、そのままギリギリと力を込める。
俗に言う、プロレス技のアイアンクローを決め込まれ、新羅は「いっ、ててててて…ごめんはなひれ」と言葉にならない悲鳴をあげる。
最後の言葉は多分、離して、と言っているんだと思われる。



「だってさ、静雄だってこの罰ゲームで良いって言ったじゃん」



何とかシズちゃんから解放された新羅が、眼鏡を掛け直しながら、再び懲りずにシズちゃんへと向き直った。
どうやら、シズちゃんも私同様『ポッキーゲーム』が何たるかを知らなかった人間らしい。



「で、出来るか、んな事」



咥えたままのポッキーをどうしようかと考えている私をちらりと見やってから、シズちゃんが呟いた。



「やれやれ。たかが罰ゲームだよ、シズちゃん。何もキスしろって言ってる訳じゃないんだからさぁ」



これまで黙っていた臨也が口を開くと、更に苛立った様子のシズちゃんが「うるせぇ、手前は黙ってろ」と唸る様に返した。



「怖い怖い。そんな怒らないでよ。シズちゃんが降参なら仕方ない。じゃ、俺がお手本見せてあげるから、そこで見ててよ」


「は?…手前、何する」


「だから、代打だよ代打。ピンチヒッター」



訝しげな表情を浮かべるシズちゃんに対し、臨也は楽しそうな様子で答える。
そして立ち上がったかと思うと、私の前へと膝をついた。



「ちょ、ちょっと…」


「それじゃ、よーい、スタート」



勝手に開始の宣言をすると、彼はそのままポッキーの反対側を口に咥える。
そして、ゆっくりと食べ進め始めた。
徐々に近くなってくるその距離に、思わず身体を後ろに引こうとしたけれど、肩を掴まれ阻止された。
少し離れた所では、こちらを眺めている新羅から「さすが、女たらしは違うねえ」と感心しているのか何だかよく分からない言葉がもれた。



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