DRRR! !【外伝】

□伍
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「で、いま場にあるカードが青の5だから数字が5のカードかカラーが青のカードを出せることになるね」


「じゃあ、これ?」


「そうそう。そんなに難しくないでしょ?」



隣で新羅にルールを教わりながら、一回戦目が進んで行く。
罰ゲームありと言う事で、みんなけっこう真剣だ。
ちなみにカードを配った臨也が親なので、周り順は臨也→シズちゃん→新羅・私の順だ。



「ちッ…」


「ごめん、シズちゃん。またシズちゃんのことスキップしちゃった」


「手前…さっきから、わざとやってやがるだろ」


「スキップのカードが俺に回って来るのは偶然だよ」



さっきから臨也の出したスキップのカードによってシズちゃんの順番が飛ばされたのは、これで連続3回目だ。
「俺って、偶然に愛されてるのかもねえ」と笑う臨也の傍らで、シズちゃんからは歯ぎしりするような音が漏れた。



「新羅、このDって書いてあるカードは?」


「これはドローツーっていって、出すと次の人にカードを2枚引かせることが出来るんだよ。
今、場のカードが緑だから、この緑のドローツーのカードを出せるね」



手渡された『ドローツー』カードを場に出すと、隣では新羅が「という訳で、二枚どうぞ」と臨也に声を掛けた。



「さっきからそこのチーム、作戦が丸聞こえだよ」



そう言いながら、臨也はカードを引かずに自分の手札から一枚を場に出した。

そして一言、「ウノ」と宣言。

どうやら、今のカードで手札がラスト一枚になったらしい。
彼が出したのは、赤・青・緑・黄色の4色のカラーが印刷されたカードだ。



「あー、ドローフォーかぁ」



臨也の出したカードを見て、新羅が呟いた。
なんでも、この『ドローフォーカード』は自分の好きな色を宣言できる上に、次の人に4枚もカードを引かせる事が出来るらしい。



「ドローツーの後ってドローフォー出せる?」


「…さぁな」



新羅の問い掛けに、シズちゃんが一言だけ呟いた。
そして「けどよ、」と再び口を開く。



「まあ、俺が中学の連中とやった時は出してなかったと思うぜ」


「ウノって公式ルールも存在するけど、種々雑多、恐ろしい程ローカルルールがあるからね」



新羅とシズちゃんが審議していると、それまで黙って聞いていた臨也が、やれやれとでも言いたそうに肩を竦めながら口を開いた。



「そこの二人、俺が上がりそうだからって共謀するの止めてよ」



確かに、このままいくと次のターンで臨也は上がれてしまいそうだ。



「ああ、でもさっきのドローフォーをオッケーにしちゃうと、静雄が6枚引くことになるけど…どうする?」


「…多数決だ。ノミ蟲、大人しく2枚引け」



臨也が出した『ドローフォーカード』を拾ったシズちゃんが、そのカードを臨也に向かって差し出した。



「…マジで」



納得いかなそうにカードを受け取る臨也に向かって、新羅が口を開く。



「悪いね、臨也。人数も少ないから、さっきのルールを許可しちゃうと、すぐに勝負ついちゃいそうだから。
ここは折原家ルール無しって事で」


「なんだよ、折原家ルールって…」


「あれ、兄妹が居る家って一緒にカードで遊んだりしない?いくら臨也だって一度くらいは妹達と遊んでやった事あるだろ?
その家特有のローカルルールとか良くあるじゃん」


「…引けばいいんだろ、引けば」



新羅の問いには答えずに、臨也は小さく溜息を吐きながら、手札にカードを二枚加えた。

否定はしない所を見ると、九瑠璃ちゃんや舞流と遊んであげた事が無くはないんだろう。
普段、臨也は色々アレだけど、妹たちの前では割と、ちゃんとお兄ちゃんしてたりするからな。

その後も何度か、新羅とシズちゃんによって通称「折原家ルール」が却下された為、一度は上がりかけた臨也の手札は少しずつ増えていった。



「あのさあ、そろそろ悪意を感じるよ?俺に対するさ」


「気のせいだよ。あ、姫乃、あと1枚だから宣言して」


「あ、ウノ!」



新羅に言われて宣言すると、向かいに座っているシズちゃんが「ノミ蟲にはぜってぇ負けねえ」と呟いた。
次のターンで私と新羅のチームが見事優勝し、残るはシズちゃんと臨也の対決となった。
けれど直ぐに勝負はつきそうだ。
私たちが上がった次のターンで、シズちゃんからも「ウノ」との声が。


先に上がった私たちは、合宿所の食堂まで来て罰ゲーム用の「マズイジュース」をブレンドしている最中なのだけど…


笑顔で飲み物をブレンドしていく新羅を見守るうちに、少し心配になってきた。


…新羅、それ、飲み物じゃないよっ!!




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