DRRR! !【外伝】

□肆
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♂♀



「告白?無理無理!だって、どう考えたって勝ち目ないじゃん。競争率高すぎ」

「だよねー。それにさ、そんな事しようもんなら女子の先輩にシメられるよ?」

「でもさぁ…」

「カッコいいよねー…」

「「二年の獅子崎先輩…」」



部屋に戻って来ると、同室の女の子達はいわゆる恋バナで盛り上がっている所のようだった。
話題に上がっているのは私たちの一つ上の学年の獅子崎一先輩だ。
成績も良くて喧嘩も強い、確か家もお金持ちだとか。
来神で女子から一番人気がある生徒と言えば、誰もが獅子崎先輩の名前を挙げるだろう。



「ねぇねぇ、倉伎さんもそう思うよね!獅子崎先輩、ちょーカッコ良くない?あ、て言うか『倉伎さん』で名前合ってるかな?」


「えっ…私?」



予想外に自分の名前を呼ばれ、恐る恐る振り返る。先程まで恋愛トークで盛り上がっていた女子たちが私の方に視線を向けていた。


「うん…『倉伎』で合ってるよ」


「良かった。部屋割り表で見ただけだったからさ」



私の答えに微笑むと、その子は更に言葉を続けた。



「この部屋、倉伎さんだけクラス違うじゃん?肩身狭い思いさせちゃ悪いからさ。ねね、こっち来て一緒に語ろーよ」



手招きしながら彼女が言う。



「あ、うん。ありがとう」



言われるままに彼女たちの輪に加わると、再び恋愛についての議論が始まった。
こうして気に掛けてくれる事は素直に嬉しかったけれど、こういう話題は正直苦手だ。
愛とか恋とか好きだとか…その議題は私にとって、苦手科目のどんな応用問題よりも難問だ。



「獅子崎先輩ってさ、付き合ってる人とか居るのかな?」

「えぇ、どうだろ。ていうか、獅子崎先輩じゃ無くても良いから彼氏が欲しいよ」

「あ、確かに言えてるー」



内心戸惑いながらも、顔には笑顔を貼り付けながら話の行方を見守る。

しばらく獅子崎先輩の話題で盛り上がった後、彼女たちは少し現実的な話題へとシフトして行った。

その話題とは「好きな人」の話。

言ってしまえば、校内きってのモテキャラである獅子崎先輩は私たち後輩にしてみれば雲の上の人も同じ。
憧れに過ぎないのだ。

これが良く言う、修学旅行の夜のテンションの様なものなのだろうか…?

彼女たちは次々に自分の好きな男子の名前を挙げていく。

違うクラスの私なんかが聞いてしまっても良いんだろうかと心配になるくらいに赤裸々なトークが続く。
内心ドキドキしていると一人の女の子が私に向かって質問を投げかけてきた。



「ねぇねぇ、倉伎さんはー?好きな人とか居ないの?」


「わ、私!?私は…」


「大丈夫だよ。ここだけの話だからさ」



そうか。
赤裸々な話を聞くという事は、自分も暴露せねばならないという事。
ここまで聞いてしまった以上、覚悟を決めて白状するしかないのだろう。
けれど、実際問題、好きな人間など居ないのだから答えようがない。
期待のこもった視線に困っていると、一人の女の子が控えめに口を開いた。



「ちょっと、ちょっと。好きな人も何も、倉伎さん付き合ってる人いるじゃん」


「え、そうなの!誰とー!?うちの学校の人?」



色恋沙汰の噂とは、当人たちの知らない所でも信じられないスピードで広がるもの。
直接の友人でなくても、あの子が誰と付き合ってるとか、もう別れたとか言う話は何故か知っていたりする事がある。



「ほらほら、倉伎さんのクラスの折原くん知らない?」


「あ、知ってる知ってる!うちのクラスでも好きって言ってる子居なかった?ちょっと悪そうだけどカッコいいよね」


「その人だよ。倉伎さんと付き合ってるの」


「えっ、嘘ー!?うわ、羨ましいー」



噂って本当にコワイ。
確かに形式上、私は彼とそういう関係にある訳だけれど…

クラスメイトという以上に臨也と校内で一緒に過ごしたりなどしないし、ましてや奴が放課後や休日にドコで何をしているかなど知ったこっちゃない。
シズちゃんや新羅と一緒に居ることの方が多いくらいだ。


その後、話題は更に困った方向へ。
デートは何処に行くかとか、キスはもうしたのかとか…

質問攻めとも言える状況に、私が途方に暮れていると、ちょうど良いタイミングで携帯の着信音が鳴った。




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