DRRR! !【外伝】
□午前25時
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午前25時
深夜25時過ぎ 新宿某所
夜中だと言うのに、インターホンの音がけたたましく響くため、部屋の主は渋々、その扉を開いた。
「こんな時間に何の用かな?
取り立て業でも始めたのかい?シズちゃんじゃないんだからさぁ、そんな風に乱暴に人ん家のインターホン押さないでくれるかな」
「今夜、泊めて」
そう言うと、女は家主の了承も得ぬままにズカズカと上がり込む。
着ていたコートやマフラーを床に脱ぎ散らかしながら進む姿に、部屋の主は盛大な溜息をついた。
「姫乃ちゃん?ここはマンガ喫茶じゃないんだけど。終電逃したからって、手軽に利用されるのは困るんだよねえ」
「私、終電逃したなんて言った?まあ、逃したんだけど。はは、さっすが〜、情報屋さんは何でも知ってるねー」
「…酔ってるのかい?」
「酔ってないし」
「酔ってる奴に限って、酔ってないって言い張るよね。帰りなよ。
そういう時に昔の男の家に上がり込むのはオススメしないね」
「へぇ、なんで?」
「何でって、あのさ、っ…」
そこで臨也は言葉を呑み込む。
否、その唇を塞がれたので黙らざるを得なかった。
「ねえ、いっつも思ってるんだけどさ、臨也は喋りすぎ。ペラペラぺラぺラうるっさいのよ。たまには私の話も聞けよ、コラ」
「口調変わってるんだけど。なに?今日はそういう気分なのかな」
「そういうって…例えば、こういう事?」
そう言って腕を伸ばすと、姫乃はその腕を臨也の首に絡め再び唇を押し当てた。
「…高い。疲れるから座って」
ソファの方を視線で示しながら彼女が呟く。
「相変わらず酒癖悪いね、全く。朝になって文句言われるのは俺なんだからさ。もう一度言うけど、止めておきなよ」
「うるさい」
少し力を込めて姫乃が臨也の胸を押す。
小さな溜息を一つ吐き出しながら、臨也は背後のソファに腰を下ろした。
「ずいぶん荒れてるね」
「どこが?通常通りよ」
着席した臨也の上に跨るようにしながら、自嘲するように姫乃が吐き捨てた。
「そうは見えないけどねえ。続きをする前に、明日の朝俺に殴り掛かったりしない事を誓ってもらいたくらいだよ」
「いつまで御託を並べる気?…うざい」
「酷いなあ。だけどさ、この場合、御託を並べてるのは君の方だと思うよ」
「揚げ足取らないで」
言い終わると同時に再び唇が重ねられる。
ついばむ様に何度かキスを交わした所で姫乃の肩がビクッと小さく跳ねた。
彼女の背にヒヤリとしたものが這ったからだろう。
「っ…手、冷たい」
「君の身体が火照ってるからじゃない?寂しいからって、毛嫌いしてる俺の所に来るくらいだからねぇ。一体どれだけ飲んだのかな?」
「ゆ、指輪外して。多分、それ」
「あまり意味無いと思うよ。さっきまで外出してたから俺の手も冷たいし。
少し寒かったから温かくて助かるよ。君の身体」
「…触り方がヤラシイ…っ、くすぐったいから、止めて。服の中に手を入れないでよ」
「はは、嫌だって言ったら?知ってるかい?くすぐったいのと気持ちがイイって感覚はさ、ほとんどイコールらしいよ。
素直に気持ちイイって言いなよ」
「やだ」
「まったく、頑固だよねえ、君も」
「……寒い」
「ちゃんと頭回ってないよね?さっきから物言いがたどたどしいよ」
そう言って臨也はソファに投げ掛けてあった自身の愛着しているコートに手を伸ばす。
それを姫乃の背に掛けてやると、間もなくして彼女は彼の肩口に頭を預けるようにして寄りかかった。
「……いざやぁ…」
「悪いけど、そんな甘えた声出されても何も出ないよ」
「…んんー……しね」
「姫乃?…やれやれ、ようやく寝たみたいだね。にしても…ここまで相手させておいて、『死ね』は無いよねぇ、『死ね』は。
ほんと、死んでくれないかな君の方こそ。シズちゃんの次くらいにで良いからさ」
深夜26時過ぎ
新宿 某情報屋オフィス消灯
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