DRRR! !【外伝】
□高所×密室×無限ループ
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乗り込んでから数分。
外からの観覧車もキレイだったけれど、中から見る夜景も負けず劣らず輝いて見えた。
遠くには空港や新宿の高層ビル群も見渡せる。
もっと高い位置までいけば東京が一望できそうだ。
「うわぁ…ビルのライトが宝石みたい…綺麗」
「へえ、ずいぶん詩的な感想だね。君からそんな情趣に富んだ台詞を聞けるとは驚きだよ」
思わず窓に両手をついて外を眺めていると、向かいの席から声が掛かった。
「…私だって綺麗な景色に感動する心くらい持ち合わせてるよ。人のこと、不感症みたいに言わないでよね」
「やれやれ。何もそこまで言ってないじゃない。ああ、でも君が珍しくはしゃいでいるのは見てて分かるよ」
「べ、別に、はしゃいでなんか…。まあ、でも…こういうの乗るの久しぶりだから。もしかしたら、初めてなのかも。
さっきから昔に乗った記憶を思い出そうとしても、ぜんぜん思い出せないんだよね」
「それは随分と寂しい幼少期を過ごしたみたいだね」
「…もうちょっと他に言い方ないの?まあ、良いけど。そういう自分だって、わざわざコレに乗るために来たんでしょ?」
「ああ、そうだよ。新宿からわざわざね。ほら、見てごらんよ。近くで見上げると空まで届きそうな高層ビルが、まるでミニチュアの模型に見える。
あそこに居る人間たちなんて、もっとちっぽけな存在だ。ここからの眺めは最高だよ。
まるで神にでもなった気分だね。君もそう思わないかい?」
彼は席から立ち上がって外を眺めながら、演説でもするかの様な口ぶりで述べた。
それと同時に、ゴンドラが小さく軋むような音を立てたのは気のせいだろうか。
「何でも良いけど、席から立たないでよ…」
私の言葉を無視して、臨也はいまだに立ち上がったまま外を眺めている。
そろそろ3分の2くらいは回転しただろうか。
高度もだんだん高くなってきた。
一番高い所まで上ったら、地上から100m以上ありそうだ。
確かに眺めはキレイだし、最初のうちは実際、私も楽しんでいた。
けれど、観覧車に乗って分かった事がある。
私…これ、苦手だ。
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