DRRR! !【外伝】
□情報屋さんとXmas
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― チャットルーム―
甘楽:ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴るぅー♪
甘楽:今日は楽しいクリスマス〜♪ですよぅ、みなさん
田中太郎:ばんわー。甘楽さん
甘楽:あれー、太郎さん何してるんですかー?
甘楽:もしかしてクリスマスなのに一人?
田中太郎:今日は友人と3人でクリスマスパーティでしたよ
田中太郎:さっき帰ってきました
セットン:メリークリスマス!皆さんはプレゼント交換しました?
セットン:私は新しく発売したゲームもらいました!良いですね、クリスマスって!
甘楽:へぇ、みなさん、ずいぶんと楽しそうですね
セットン:あの、もしかして甘楽さん…
田中太郎:一人?ww
甘楽:なんですかぁ?wwって。もうっ><プンプン!
甘楽:あ、ちょっと呼ばれてるんで落ちます!
―甘楽さんが退室されました。
田中太郎:あれ、甘楽さん。呼ばれてるって誰に?w
田中太郎:あー…落ちちゃいましたね
セットンさん:なんか気の毒…
――――
「クリスマスねぇ…日本人て面白いよね。どうして他宗教の祭日をここまで盛大に祝うんだろうねえ」
「いーざーやーくーん……さっきから呼んでるんだけど?さっさとコレに目を通して」
「あのさ、どっかのバーテン風の破壊神みたいな呼び方しないでよ」
イライライライラ。
来良学園は終業式を迎え冬期休業に入った。せっかく家でゆっくりしようと思ってたのに。
年越し前に保健室を整理しようと思い休日出勤した学校帰り。
臨也から依頼されていた仕事を事務所に届けて帰ろうとなんてしなければ良かった。
引き止められて仕事を手伝わされるハメになり、今に至る。
「君はさ、こういうイベント事にはほんと、興味ないよね?」
「イベント?何?冬休み?」
私が答えると、彼は小さく噴き出した後で、哀れむような視線をこちらに向けてきた。
「なに?……ちょっと、そういう可哀想なものを見る目で見ないでよ」
「今日が何日だか知ってるかい?」
「12月25日だけど?時刻も教えてあげる。19時43分56秒。ちなみに私はお腹が空いてるからすごくイライラしてるの。
このまま衝動に従ったら、年明けは刑務所かもね」
「それは俺への殺人予告かい?自信があるならやってごらんよ。迎え撃ってあげるからさ」
そして彼は少し考えるように顎に手を当てて、
「刺殺撲殺絞殺殴殺……ま、いずれにせよ君に勝ち目は無さそうだけどね?」と口元に笑みを浮かべた。
そして話題を変えるように「それはさておき」と話し始める。
「12月25日って言ったらクリスマスだよ、クリスマス。そんな日に、君はこんな所で一体何をしてるんだろうね。って考えたら可笑しくってさ。同情するよ」
「誰が無理やり手伝わせてるのよ……私はべつにクリスチャンじゃないからクリスマスをわざわざ祝う必要性はないけど?
それに、聖なる夜に家の中に引きこもって仕事してた可哀想な人に言われたくない。はい、これ」
「ご苦労さま。じゃあ、次はこっちね。ちなみに言うと去年も仕事してたけど?
……充実してるよ、コレはコレでさ」
そう言いながら次の仕事のリストを渡してくる臨也を睨むと、「これでも舐めて眉間のしわを何とかしてよ」とアメを一粒、掌に落とされた。
どこから出したのか、可愛らしく包装されたミルクキャンディだ。
包み紙を開いて口に放り込むと、濃厚なミルクの風味が広がって、その甘さに少しだけ気分も落ち着いた。
「フライドチキンが食べたい」
「俺は好きじゃないよ?ああいう画一化された味のジャンクフードはさ」
私の呟きに、臨也はパソコンのキーボードを叩きつつ答える。
「それに、クリスマスを祝う気はないって言ってなかったかい?」
「連日のようにテレビでチキンのCM流されたら食べたくもなるでしょ」
「なるほどねぇ。君もまんまとイベント事に乗じて売り上げを伸ばそうと企む飲食業界の戦法に引っ掛かったという訳だ」
皮肉めいた台詞を無視し、私はもと居た席へと戻る。
クリスマスか…
もう何年もお祝いとかしてないな。
去年は姉さんのお見舞いをした後、一人で露西亜寿司に行った気がする。
サイモンにケーキを出されてクリスマスだった事に気付いたんだっけ。
……うわ、自分が可哀想になってきた。
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