DRRR! !【外伝】

□新入部員
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「新羅、生物部に入りたいって子が居るんだけど」



放課後、臨也は鞄に荷物をつめる新羅に、さっそく入部希望の女子生徒の話を振っていた。



「そうなの?僕としては、あんまり大所帯になってくれなくても良いんだけど」



もともと新羅は部活をやる気はない。
ただ、片想いの相手に認められたい一心で‘部活に所属している’という事実が欲しかっただけだ。
そんな彼にとっては、少人数のままで適当にやれる部活のままであって欲しい所なのだろう。

人数が増えれば活動内容が確立され、部活に時間を取られるかもしれない。
一刻も早く自宅に帰りたい新羅にとって、それは避けたい事態だ。



「…あ、ちょうど居るからさ。連れてくるよ」



ふと臨也が目線をやった先では、いま話題に上がっている入部希望の生徒―倉伎姫乃が教室の出口に向かって歩き出そうとしている所だった。



「ねえ、ちょっと良い?いま、君の事を新羅に話してた所なんだけど」

「えっ…あの、ちょっと…!」



いきなり腕を引っ張られて驚く彼女を無視して、臨也は新羅の前まで姫乃をぐいぐいと連れて行く。



「さっき言ってた入部希望の子」



臨也はそう一言だけ告げて、姫乃の背を押して新羅の目の前へと立たせた。



「ああ、君かあ!倉伎さん、小学校同じだったんだけど覚えてる?」

「あっ、うん…」



自分の予想は当たっていたようだ。

倉伎姫乃は岸谷新羅に恋をしている。

あからさまに動揺している彼女の様子を臨也は愉快気に眺めていた。



「生物部に興味あるの?」

「うん、まあ」



馬鹿だな、新羅。
彼女が興味あるのは生物部じゃなくて、お前だよ。
臨也は内心で呟きながら、黙って会話を見守る事にする。



「なんだ。じゃあ最初から折原くんじゃなくて君の事誘えば良かったな」

「…え?」

「おいおい、それは俺に対して失礼じゃないか?最初は部長まで俺に押し付けようとしてたのに」



そこで臨也は思わず口を挟んでいた。



「ああ、ごめん。たださ、倉伎さんなら適当に部活やってくれそうだなって思ってさ。ああ!違うよ?
君が不真面そうとかじゃなくて、倉伎さんて、ほら、洒洒落落というか、あんまり物事に執着しなそうだからさ。興味無さそうっていうか」



ああ、確かにそれはある、と臨也も思う。
これくらいの年齢の女子なら、グループでつるみたがりそうなものだけれど、姫乃は他の生徒に対して、妙にあっさりした態度で接している様に思える。



「なあ、新羅。彼女は生物に興味は無いと思うよ。だよねえ、倉伎さん?」

「え、そうなの?まあ、別に構わないけど。じゃあ、何で入りたいの?」



新羅に目を向けられ、姫乃は回答に困っていた。
確かに生物部に入りたいのは、新羅と少しでも一緒に過ごせる時間が長くなればと思ったからだ。
でも、そんなストレートに答えられる訳も無い。
それ以前に、自分の気持ちを臨也に気付かれている事実の方に動揺していた。


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