DRRR! !【連載】

□26×ペテン師
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私が臨也から知らされている彼の連絡先は3つ。

通常用、緊急用、もう一つは予備用。

まあ、通常用以外は使った事もなかったし、ほとんどこちらから連絡を取る事も無いけれど。
一体何台の携帯を所有しているんだか…
そこで、ふと気付いた。



「手、大丈夫?けっこう切れてるんじゃないの?」

「…あぁ、これかい?」



私の言葉に臨也が顔を上げた。
携帯を持つ彼の手の甲には血が滲んでいて痛々しい。



「ゴミ箱を投げつけられた時だね。側面で良かったよ。
打ち所が悪かったら死ぬっつうの」

「ちょっと見せて」

「これくらいなら、すぐ治るから平気だよ。血も止まってるみたいだしね」

「いいから。乾かすと治りが遅くなるよ」



携帯を取り上げテーブルの上に置き、空になった臨也の右手を引っ張ると、彼が僅かに表情を歪ませた。



「痛っ…、どうせ手当てしてくれる気なら、少しは優しくしてくれないかな?」


「私、十分優しく接してあげてるつもりだけど?ちゃんと手当てした方が良いよ。
あ…新羅に診てもらう?」


「あのさ、それって君が新羅の奴に会いたいだけじゃないのかい?
止めて欲しいね、人のことを出しに使おうとするのはさ」


「…冗談よ。縫合処置は必要なさそう。化膿止めの軟膏持ってるから特別に無料配布してあげる。
あと、これ抗生物質。念のため3日間くらい飲んでおいたら?」


「…職業病かい?」


「それから、帰ったらちゃんと傷口を洗う事」


「意外だね。君は俺が怪我をしようがのたれ死のうが興味は無いものだと思ってたけど。
どういう風の吹きまわしかな」


「悪いけど、私はあなたが死んだところで涙を流せる自信がないわ。
だけど、私の目の届かない所でにしてくれる?胸くそ悪くて仕方ないから」


「上品な言葉づかいに感動するよ。行動が台詞に伴ってないけどね」


「…私は目の前で怪我してる人間を放置するほど非情じゃないの。あなたと違ってね。
はい、完了」



テーブルの上にバックを置いて、傷の手当てに使った道具を片付けていると、おもむろに臨也が私の荷物の中から何かを取り出した。



「よく日常生活でそんな治療道具を持ち歩いてるよね。ところで、これは何に使うんだい?」

「っ…あ、それ…」


臨也がゆらゆらと掲げているのは、昨日、狩沢さんからプレゼント(?)された黒いカチューシャだった。
猫耳付きの。
そのまま同じバックで出勤したので入れっぱなしになっていたんだった。



「そうだね。面白そうだから、今から語尾に『にゃん』とか付けて喋りなよ。ほら」



必死に色々と想定される言い訳を考えあぐねている私の頭に、例の猫耳を装着させながら臨也が言う。



「…ほんと、早く死んでくれないかニャン?コイツ」

「すごいねえ、全く可愛くないよ?
さっきは目の前でのたれ死ぬなって言わなかったかな?」



そんなやり取りをしている所に、やっとオーダーした料理を持ったサイモンがやって来た。



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