DRRR! !【連載】
□25×犬猿の仲
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コンビニのゴミ箱が宙を舞って、ましてや人ごと吹き飛んでいくなんて―
池袋以外では正に非日常的な光景だ。
そんな事態に直面し、あたふたと辺りを見渡す帝人くん。
今から起きるだろう事を理解して焦る紀田君。
わりと落ち着いた様子の園原さん。
反応は三者三様だ。
そんな中、ゆっくりと臨也が立ち上がると、コンビニのゴミ箱を投げつけて来た張本人の声が辺りに響いた。
「いーざぁーやぁーくーん」
バーテン服のポケットに、掛けていたサングラスをしまいながら、彼―池袋の喧嘩人形こと平和島静雄が続ける。
「池袋には二度と来るなって言わなかったっけかぁ?イザヤ君よぉ」
「シズちゃん…君が働いてるのは西口じゃなかったっけ?」
何時もの余裕そうな笑顔を消し去って、臨也が答えた。
「とっくにクビさ。それに、その呼び方はヤメロって言ってんだろ?俺には平和島静雄って名前があるってよぉ゛」
相当イラ立っているようで、額に青筋を立てたシズちゃんは、今にも臨也に殴りかかりそうだ。
そんな様子を他人事のように傍観していると、臨也に視線を投げ掛けられた。
「シズちゃんがとっくにクビになってた事…知ってたのかな、姫乃ちゃん?」
「知ってたけど?」
「…ほんと、良い性格してるよね、君もさ」
言いながら、臨也は小さく肩を竦めた。
シズちゃんが西口のお店をクビになったのは最近だから、さすがの臨也でも、そこまで掴んでいなかったらしい。
まあ、教えてあげる気は最初から無かったけれど。
少しは何時も振り回される私の身にもなれ、と言いたい。
臨也は気を取り直し、再度、シズちゃんに向き直る。
臨也につられてシズちゃんの方を見遣ると、一瞬だけ、シズちゃんと目が合った。
すぐに臨也の方へ視線を戻したシズちゃんが低く唸るような声色で口を開いた。
「おい、ノミ蟲。テメエ…まだソイツにちょっかい出してんのか?」
「…ソイツっていうのは姫乃ちゃんのことかな?」
「まぁ、良い…取り合えず、今、ここで俺に殴られろ。なあ゛?イザヤ君よぉ」
殺伐とした空気の中、臨也は普段通りの調子で、言葉を放った。
「やだなあ、シズちゃん。君に罪をなすりつけた事、まだ怒ってるのかな?
それとも…許せないのは、俺が君の大事な幼馴染である姫乃ちゃんに手を出した事、かな?
そんなに腹を立てるくらいなら、彼女に首輪でも付けて鎖でつないでおくんだね」
シズちゃんを挑発する為とはいえ、臨也がとんでもない台詞を吐いた。
…あの、バカ。
ここに居る三人の生徒たちにも、今の問題発言は届いていたようで、彼らから向けられる何とも言えない視線が痛い。
「っ……黙れ。
怒ってないぜ。ただ、ぶん殴りたいだけさ」
少しシズちゃんへ鋭い視線を向けた後、小さく肩を竦める様にしながら臨也が言う。
「シズちゃんの暴力ってさ、理屈も言葉も通じないんだから苦手だよ。
困ったなぁ…見逃してよ」
言い終わると同時に、臨也は隠し持っていたナイフをシズちゃんへと向ける。
そうこうしているうちに、先程の路地裏で臨也が撃退した不良が仲間を引き連れて戻ってきた。
最悪だ…。
このままだと大乱闘は免れないだろう。
何とか、生徒だけでも安全な所へ逃がさないと。
「逃げなさい。ここに居たら危ないよ」
「…倉伎先生」
弱々しく声を発した帝人くんに向き直る。
「女の子は、守ってあげなきゃ。園原さん連れて逃げて」
さっき臨也が取り出したナイフを見てから、不安そうな様子の園原さんが気になる。
その時、後ろでは集まった不良の内の一人が、持っていた角材でシズちゃんの後頭部を思いっきり殴っていた。
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