DRRR! !【連載】

□25×犬猿の仲
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25×犬猿の仲


 

「いやぁ、本当に偉いよね。虐められてる子を助けようとするなんて」



臨也に言われ、照れくさそうな様子の帝人くんを園原さんが見つめる。

路地裏から場所を移して、路上で立ち話をするハメになったのだけど…
さっきから紀田君からピリピリとした緊張感が伝わってくる。



「久しぶりだね。紀田正臣君。その制服、来良学園だね。入学おめでとう」



そんな紀田くんに、あくまでも自然な様子で、臨也が声を掛けた。



「えぇ、おかげさまで」



答える紀田くんに、臨也が更に続ける。



「来良学園てことは、知ってるかな?彼女のこと」



二人の会話を見守りながら、すっかり気を抜いていた所で、唐突に臨也から視線を投げかけられた。
当然、紀田君をはじめ、帝人くんや園原さんも、私の方へと視線を向ける。



「知ってます。うちの学校の先生ですから。
…臨也さんは、姫乃ちゃん…倉伎先生と知り合いなんですか?」



紀田くんに「先生」と呼ばれたのは初めてな気がする。

彼は、‘うちの学校の’という部分を少し強調するように言った。

臨也の答え次第では、厄介な事になりかねない今の状況で、ちゃんと「先生」と呼ばれた事を少し嬉しく思う。
自分でも悠長だとは思うけれど、私の事を、一応だとしても、ちゃんと先生だと認めてくれていた事が嬉しかった。



「そうだね。知り合いだよ」



少し浮かれていた私の心は、臨也の声によって再び緊張感を取り戻す。



「それは…どういう」



紀田君はさらに臨也に問い掛ける。
止めに入ろうかとも思ったけれど、変に口止めするのも逆に怪しい。
緊張した面持ちで臨也の返答を待つ紀田君と同じくらい、私も息が詰まる思いで彼の答えを待った。



「ただの同級生だよ。高校の時のね。さっき偶然会って、話し込んでたら君たちを見つけた。
そうだよね?姫乃ちゃん」

「…そ、そうだね」



この答えで満足かい?とでも言いたそうな様子で問う臨也に、若干引きつりながらも、私は笑顔で答えた。
無難な答えで有難かったけれど、できれば名字で呼んで欲しいくらいだ。



「…そうですか。
それにしても、珍しいっすね。臨也さんが池袋に居るなんて」



なんとか窮地を脱せたようで安心する。
紀田君は少し腑に落ちない様子ではあったけれど、私と折原臨也の関係について、これ以上の追及は諦めてくれたようだ。
そして、臨也が帝人くんへと視線を移したことで、紀田君の意識は更にその問題から離れることとなった。



「ああ、コイツは俺のただの友達です」



慌てた様子で、臨也から帝人くんを庇うように前に出る紀田君。
大事な友達を、こんな危ない奴に紹介したくはないだろう。
そんな紀田君を無視して、臨也が帝人くんに向き直る。



「ふーん。俺は折原臨也。よろしく」

「あ、りゅ、竜ヶ峰帝人です…」



紀田君の思いも虚しく、帝人くんは条件反射のような形で臨也に名乗った後、ペコリと頭を下げた。
これは仕方ない。
帝人くんのような子なら、目上の人に名乗られて、自分が名乗らない訳にはいかないだろう。



「へえ、エアコンみたいな名前だねえ」



そこで臨也が、帝人くんの名前に対する例の感想を口にした。
いや、私も前に同じことを帝人くんに言った事があるけれど、改めて聞くと酷い感想だ。

失礼な感想を述べた臨也に対し「あ、はぁ」と控えめに返した後で、帝人くんが私の方に視線を向けた。
私が前に同じことを言ったのを覚えていたのだろうか…。
私と目が合うと、帝人くんは少し慌てたように臨也の方へ視線を戻した。



「それで…なんで池袋に?」



臨也の意識を帝人くんから離させたい紀田君が、口を挟むように疑問を投げかけた。



「ちょっと、人に会いにね。もう会えた」

「え…」



答えた臨也の視線は帝人くんに向けられた。
予想外の事態に、帝人くんは少し驚いたように目を丸くしている。

そういえば、臨也はどうして帝人くんに興味を持ったのだろう。
帝人くんを見る限り、彼は田舎から上京してきた、何処にでもいそうな平凡な男子高校生だ。

うん、むしろ普通すぎるくらいに。

まあ、私が考えた所で、到底答えには巡りつかないと思うので止めておく。

会話の行方を見守ろうと意識を戻した瞬間、私の目の前では臨也がコンビニのゴミ箱とともに吹き飛んだ。


これは…

さらに面倒な方向に事が運んでいる気がする…



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