DRRR! !【連載】
□24×妖怪カマイタチ
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出来れば、臨也と知り合いだと言う事を、あの二人にはバレたくない。
特に紀田くん。
彼が臨也に対してどんな感情を抱いているかは容易に想像がつくし、何より、学校での会話を思い出す。
池袋で絶対に関わっちゃいけない人間と繋がりがある学校職員とか立場的にどうなの?
同級生だと言う事だけで押し通せるだろうか…いや、でも…
「珍しいね。姫乃が他人を気にするなんて」
グルグルと脳内で考えを巡らせていると、相変わらず私の腕を掴んだまま歩く臨也が、前を向いたまま言葉を発した。
確かに、自分でも珍しいとは思う。
これまで他人からどう思われようと構わなかったし、興味も無かった。
むしろ、‘人と関わる’という事を積極的にしてこなかったので、そんな事を気にする必要が無かったのだ。
けれど、最近はどうだろう。
学生時代は、クラスメイトの名前もろくに覚えられなかったのに、保健室にくる生徒の顔と名前を何とか覚えられるようになった。
(パソコンに名前と写真など簡単な個人情報を入力してあるので、どちらかというとデータとして記憶している、という方が近いけれど…)
「少しは他人に興味を持てるようになってきたって事かな?」
立ち止まった臨也が、私の方を振り返りながら問い掛けてくる。
少し先では、紀田くんと帝人くんが広場で話し込んでいるようだった。
「ほんと?…そう思う?」
「俺は中学から君を知っているけど、昔よりはマシになったんじゃない?
まあ、その調子で頑張りなよ。俺も応援してあげるからさ」
そう言って、少し私に目線を合わせるように屈んだ臨也は、たまに妹たちにしてやる調子で私の頭を左手でポンと撫でた。
おまけに顔には温かい微笑みを浮かべて。
「…あの」
「なにかな?」
直感的に思い浮かんだ嫌な考えが当たっていない事を切に願う。
…この人
今、私のことを『観察対象』として眺めてる…
「おや、動き出したみたいだね」
臨也につられて紀田くん達の方を見ると、二人が立ち上がって再び通りに出る所だった。
そんな彼らの後を追い、私たちも歩き出す。
さっきの嫌な予感…
確かに、何度か臨也に言われたことがある。
私の『感情』に興味があると。
まさか、その興味は現在も継続中なのだろうか…
あくまでも彼にとっては、全ての人間が等しく『観察対象』なのだと改めて痛感する。
けれど、妙なことに巻き込むのだけは止めて欲しい。
高校を卒業してから疎遠になっていた臨也と再会する事になった、ある一件を思い出し、そんな事を考えている。
私がぼんやりと眺める先では、紀田くんが何時もの大げさなジェスチャーを交えて、帝人くんに何かを熱弁している所のようだった。
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