DRRR! !【連載】

□24×妖怪カマイタチ
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24×妖怪カマイタチ


 


わざわざ新宿から池袋に出向いてきた臨也の目的は、竜ヶ峰帝人くんとの接触だ。
下校した帝人くん達の行方を捜すのを手伝わされるハメになった私が臨也に見返りを求めると、彼は、「夕飯おごるよ」と笑顔で答えた。

…こいつは私が食べ物で釣られるとでも思っているのだろうか。

けれど、自分で見返りを求めておいて何だけど、私としても特に要求すべき事柄が見つからない。
結局、何も思い付けなかった私は、渋々、『今夜の夕食』を条件に、奴の趣味に付き合ってあげることにした。



「…き、紀田くんが、帝人くんに池袋を案内してあげるって言ってた。当分は帰らないんじゃない?」

「なるほどね。食べ物で釣れるとは思わなかったけど、楽に交渉成立できて良かったよ」

「べ、別に釣られた訳じゃ…」

「それじゃ、まずはシズちゃんが働いてるはずの西口方面を避けて探そうか」



生活費とか姉さんの入院費とか、色々大変なんだから!という私の言い分は聞かずに彼は話を進める。
まあ、言った所で自分が惨めになるのは目に見えているので、これ以上は何も言わないでおこう。



「…どうする?手分けして見つけ次第連絡する?」

「まさか。一緒に探すに決まってるじゃない」

「…そう?」



あえて効率の悪い方法を選んだ事が少し意外だった。
思わず臨也を見上げると、気付いた彼がこちらに視線を向けた。



「盾だよ」

「…え?」



言葉の意味が理解できずに居ると、小さく笑った臨也が更に言葉を続けた。



「だからさあ、シズちゃんが現れた時の為に、俺は君を盾に取る事にするよ。幸い、シズちゃんは姫乃に甘いからね」

「ねえ、臨也。今自分がものすごく最低な台詞を吐いているって自覚はある?」

「君は俺のことを非情な人間だって思ってるのかな?女の子を盾にするなんて良心が痛むよ」

「あなたに痛めるような良心が備わっていたなんてね」

「俺はむしろ君の方が俺に対しての悪意に満ちあふれていると思うけど?」

「私の気持ちがちゃんと伝わってたみたいで良かったわ。…あ」



思わず声を漏らしたのは、通りの向こうに来良の制服を来た二人組の男子生徒が目に入ったから。
二人のうちの金髪の男の子が、ナンパでもする様に女性に声を掛けている。

…紀田君だ。

そして、そんな紀田君を少し離れた位置から眺める帝人くん。
隣で立ち止まった臨也が、二人の方に向けていた視線をちらりと私の方へ移してから、口を開いた。



「意外と簡単に見つかったねえ。少し後をつけようか」

「わ、私はここで!見つかったんだから、後は一人で好きにすれば良いでしょ」

「…ああ、もしかして」



臨也がにやりと口端を持ち上げる。



「彼らに俺と知り合いだって気付かれたくないのかな?」

「…べ、別に」



図星をつかれて、思わず目を逸らす。

臨也と紀田くんに面識があるのは知っていた。
過去に、臨也がまいた種が原因で起こった事件で紀田くんの彼女が足に大ケガを負って未だに来良総合病院に入院している事も…。
確か、カラーギャング同士の小競り合いに巻き込まれたんだ。
まだ中学生だった紀田くんが、何故その抗争に巻き込まれたのかは知らないけれど…



「それなら問題ないよね?ほら、行くよ」



言い終わると同時に私の腕を掴んで歩き出す臨也。
そのまま、今度は紀田くんと帝人くんを尾行させられる事になってしまった。


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