DRRR! !【連載】

□23×ストーカー
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「運び屋に頼んで君に渡してもらっても良かったけど、俺も池袋に用があったからね。
だけど、流石に普通に手渡すのは怖いじゃない?俺は池袋だと面が割れちゃってるからさ。
まったく、どこで見られてるか分からないから怖いよ。君だって、怖い人たちに目を付けられるのは嫌だろ?
これなら昼間っからイチャつくカップルにしか見えないよねえ。あ、そろそろ良いよ、離れて」



そう言い終わらないうちに、私の体を抱えるようにしていた彼の右腕が離れる。
急に解放されて、バランスを崩した私は危うく転びそうになった。

本当にこの人は…どうしてこんなに他人をイラ立たせる事が上手いんだろう。



辺りを見渡すと、いつの間にか人通りの少ない路地まで歩かされていた。

確かに、裏では名の通った情報屋との仕事の取引を誰かに目撃されるのは私としても避けたい所だ。

絶対に色んな方面で恨みを買ってそうだもんね…臨也の奴。

その巻き添えをくって怖い人たちに拉致られなんてするのはマジで勘弁願いたい。



「それじゃあ、来週中に宜しく」



一人怒りを鎮めていると、涼しげな声で臨也から依頼の期限を告げられた。



「…はいはい。了解しました。あ、ところで池袋に何しに来たの?」



さっき、臨也は池袋に用があると言っていた。
シズちゃんにボコられるリスクを冒してまで、一体何をしに来たんだろう。

そう思ったけれど、だいたい察しがついた。
多分、臨也は‘彼’に会いに来たのだろう。

私の問いに、辺りを警戒するように見渡していた臨也がこちらに視線を向けた。
もしかして、シズちゃんが居ないか気にしているんだろうか…。



「…言ったよね?
君に会って話したい事があったんだ。だから校門前で来良の生徒に好奇の目を向けられながらも、俺は健気に君が出て来るのを待ってた訳なんだけど。
そんな俺の着信を君は気付いて居ながら出なかった。まったくもってエゲツナイよねぇ」

「ここまで‘健気’って形容詞が似合わない人間が居るとは驚きね。…戯言は良いから、ちゃんと答えてよ」



私の言葉に臨也がわざとらしく肩を竦めるようにして答えた。



「そうだね、言ってしまえば君はついでだよ。今日は竜ヶ峰帝人くんに会いに来たのさ。紀田正臣くん?彼、姫乃に懐いてるらしいね。
だから、君に電話して学校で帝人君たちを足止めしといてもらおうと思ったんだけど」



紀田くんが頻繁に私を訪ねてくる事や彼が何時も帝人くんと一緒に居るのを何故知っているのか、と言う疑問もあったけれど、もうそこはスルーする事にした。



「私が協力するとでも?」

「俺と君との仲じゃない。持ちつ持たれつって言葉があるだろ?
まあ、今日は行方が分からないから地道に探すとするよ。君と一緒にね」

「なんで私が!」

「彼ら、学校を出る前に何か言ってたかな?」



もはや何を言っても無駄そうだ。



「…見返りは?」



強引さに負けた私は、諦めて手伝ってやる事にした。
だけど、絶対にタダ働きはしたくない。

私の言葉を聞いて、臨也はにこりと微笑んだ。


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