DRRR! !【連載】

□23×ストーカー
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23×ストーカー




保健室の扉を開けると、ちょうど携帯がブルブルと振動している所だった。

着信だ。

急いで携帯を手に取り、着信表示の名前を確認して出るのを止めた。
噂をすれば影、とはこの事か。



「何の用…?いいや、帰ってから掛け直そ」



先程、話題に上っていた人物の名前を見て、未だ鳴り止まない携帯を少々乱暴にバックへと投げ入れた。
その後も校舎の外に出るまでに3回も同じ相手から着信があった。

着信履歴の欄には『折原臨也』の名前が並ぶ。

ストーカーか、あんたは…

全て無視して校門を出ようとした所で、再び奴から着信があった。
しかも今度はなかなか切れない。

正直…うざい。

いつまでも止まない着信にイライラし、仕方がないので通話ボタンに指を掛けた。



『……』

「……もしもし?」



なかなか話し始めない相手に根負けし、私が先に言葉を発した。
ゆっくり歩きながら待っていると、やっと向こうも口を開いた。



『お疲れさまー。なんだ、もう仕事終わってるんじゃない。てっきり忙しいのかと思ったよ。
君も酷いよね、まだ分かりやすく着信拒否された方がマシだよ』

「じゃあ今度は着拒するね」

『そうつれない事を言わないで欲しいな。ところでさあ、ちょっと会って話したい事があるんだけど』

「電話で済ませてくれない?」

『電話でも済む話だけど、渡したい物もあるからさ』

「渡したい物…?」



何だろうと思っていると、校舎からチャイムが響いた。
そして、何故か耳に当てた携帯の向こうからも時を知らせる鐘の音が聞こえる。

あれ…来良のチャイムと同じ音…?

事態を飲み込めずに居ると、電話の向こうで臨也が話し始めた。



『それにさぁ、もう池袋に来てるんだよねえ、俺。何処に居るか教えてあげようか?』



何だか嫌な予感しかしない。



「正解は…」



今まで携帯のスピーカから聞こえる声に集中していて気付かなかったけど、今の声は確かに聞こえた。
受話器の向こうからじゃなくて、すぐ近くから。



「来良学園の校門の前でした」



その声と同時に、後ろから右肩に手を置かれる。
振り返らなくても、そこに立っている人物が誰なのかは分かった。



「へぇ…折原臨也って情報屋から転身してストーカーになったの?」

「おや。それじゃあ、君は俺にナイフで刺されても文句は言えないよね?
だけど、俺は君のストーカーじゃないから君を付け回した挙句に暴行したり、ましてや殺したりなんてしないから大丈夫だよ。多分ね」



何が多分だ…。



「少し歩こうか?ここは人が多いからね」

「勝手に一人で進めないで。まだ話を聞くなんて言ってないけど」

「困ったなあ。あんまり我がまま言わないでくれるかな?
こっちは何時シズちゃんに見つかるかも分からないんだからさ。ほら、おいで」



そう言って、肩に腕を回され無理やり歩き出す事になる。



「ちょっと離れてよ!ここ学校前なんだから…生徒に見られたら」

「校門前を男と歩いてたらマズイって?だろうねえ。じゃあ大人しく着いておいでよ。何なら解雇処分になれるように今ここでキスでもしようか?
これを機に転職活動でもしたら良いんじゃないかな。特別に斡旋してあげるよ。それとも、うちの事務所で働きたいかい?」

「…止めておいた方が良いんじゃない?舌を噛み切られたくなかったらね」

「怖いねえ。そんなグロテスクな死に方は御免こうむるよ。あ、そうそう。先に渡しとこうか」



臨也はそれまで私の肩を抱いていた右腕を、今度は腰の辺りに滑らせる。



「だから…くっつかないでって言ってるでしょ」



私の話を聞いていたんだろうか…



「暴れるなって…前向いて、普通に歩いて」



腕を振り解こうとすると、逆に強い力で引き寄せられた。
何の嫌がらせ?と思っていると、腰に回された手が私の着ている上着のポケットに突っ込まれた。



「それ、この前の報酬ね。
ああ、あと次に頼みたい仕事の依頼も今渡したUSBにまとめてあるから」



言われて、ちらりと上着のポケットを確認すると、封筒とUSBメモリーが入れられていた。


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