DRRR! !【連載】

□22×オリハライザヤ
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「あ、ごめんごめん。大丈夫。紀田君、続けて」



帝人くんの言葉を聞いて、ダラーズの話を中断していた紀田君に、先程までの続きを促す。



「あっ、いいよ、いいよ。ごめんね、姫乃ちゃん。女の子が居るのに、こんな色気のない話をするなんて…俺としたことがっ。
そうだ、具合良くなったら何処行くか決めようぜー。ねね、姫乃ちゃんは何処にデート行きたいー?」



ああ…
この前うっかり口を滑らせて約束してしまった事を、紀田君はちゃっかり覚えていたらしい。



「うーん…そうだね。あ、図書館でお勉強する?」

「それ、デートじゃないじゃんっ!あ、でも、内容は普通の授業じゃ教えてくれない個人レッスンとかなの!?
それなら、保健室とかの方が良くない?」



目を輝かせながら言う紀田くんに冷たい視線を送りながら、帝人くんが呟く。



「紀田君、それ、セクハラだよ」

「なんだよー。帝人もそういう課外授業なら受けたいだろ?」

「えっ!?う、受けたくないよっ」

「ああ、ひっでー。帝人は姫乃ちゃんの授業は受けられないって言うんだな」

「え、あっ、そう言うんじゃなくて…。すみませんっ、倉伎先生」



帝人くんは慌てた様子で私に頭を下げた。
何とも見ていて微笑ましいコンビだ。

確か、帝人くんと紀田君は小学校からの親友だと言っていたっけ。

良いな、そういうの…

自分の友人と呼べる範疇に居る人間たちを思い出してみる。
バーテン服の破壊神に都市伝説扱いされる首なしライダー、ヤバい患者専門の闇医者に、人間観察が趣味の情報屋…
なかなか濃過ぎるメンツしか居ない。



「あ、姫乃ちゃん。じゃあ、とりあえずさー、そろそろ携帯の番号だけでも教えてよっ。もしくはアドレスだけでも!」



相変わらず、めげずに連絡先を聞いて来る紀田くんに思わず苦笑していると、帝人くんが「紀田君やめなよー」と止めに入ってくれた。



「帝人。だからお前は最後のひと押しが甘いんだよ。いいか?
漫画の世界じゃないんだから、保健室の先生が若くて、しかもエロ可愛いなんて、男子の妄想を形にしたような、そんなラッキーなシチュエーション、普通は滅多にないんだぜ。
ウハウハの学園ラブコメ生活を送るためにも、俺は何としても姫乃ちゃんとお近づきになる必要がある。オワカリ?」

「…不純だ」



一気に捲し立てた紀田くんに対し、帝人くんは小さく呟いた。



「うーん、仕方ない。良いよ。紀田君の熱意に負けて、連絡先交換してあげる。
ただし、用も無いのに連絡したりしないでよ?」

「え?マジで?リアリー!?よっしゃー!」

「あ、ごめん。携帯忘れて来たみたい」

「何だよ、それーっ」



大袈裟なジェスチャーでガッカリする紀田くんに「ごめんごめん」と声を掛けつつ、バックの中を探してみるけれど、やはり携帯が見つからなかった。
保健室に忘れたな、これは。



「また今度教えてあげるから、そんなに落ち込まないでよ」

「はぁ。センチメンタルな俺のガラスハートが砕け散りそうだよ。今度、ぜったい聞きに行くから携帯握りしめて待っててよ?
…仕方ない、今日は帝人にブクロを案内してやるとするか。さあ、片っぱしからナンパするぞー」



紀田くん、それ案内ちがう…。
脳内で紀田くんにツッコミを入れてから、今日もナンパに付き合わされるだろう帝人くんに少し同情した。



「それじゃ、私は一回保健室に戻るね。二人とも行ってらっしゃい。ナンパ、引っ掛かると良いね」

「え!倉伎先生まで!?」

「さっすが姫乃ちゃん、話が分かるねー!それだけ俺のことを信頼してくれていたなんて。
大丈夫、ナンパ中だって俺の心は君のものさっ!」



呆れ気味の帝人くんと、長々とキザったらしい台詞を喋る紀田くんに背を向け、私は保健室への道を戻り始めた。



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