DRRR! !【連載】

□15×待ちぼうけ
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15×待ちぼうけ



「ん…雨?」


顔に冷たい雫が落ちてきたので空を見上げる。
少し大粒のソレは徐々に勢いを増しながら降り出した。


「やだ、傘持ってないっ…こんな事ならセルティに送ってもらえば良かった」


慣れない道を小走りに進み、何とか目的の建物まで辿り着く。

その頃には全身ずぶ濡れになっていた。
ツイてないな、まったく…

上着の裾を絞ると少し水が落ちた。せっかく鍋で温まったのに。
しかも、もう8時を回ってると言うのに臨也はまだ帰っていないようだった。
仕方がないので、部屋の扉の前に座り込む。

携帯に連絡しようかと思ったけれど、止めた。
なんか、こっちから連絡するのはしゃくだ。
寒い。



「楽しかったな。良かった、新羅とも普通に話せて」


セルティも数少ない大切な友人の一人だ。
今では心から二人のことを祝福できるようになった。


「少しは進歩しただろうか…」


呟いた言葉は誰もいない廊下に静かに響いた。

セルティに心配掛けてしまったかな…。

姉さんの事は確かに恨んでいる。
でも見捨てる事も出来なかった。
たった一人の家族だから。

愛憎という複雑な心理は自分でもどうにも出来ない。

膝を抱えて顔を埋めていると、廊下の端から足音が響いて来た。
顔を上げずに居ると、その足音はすぐ傍で止まった。



「おまたせ。ていうか、待ってたんだね?」


悪びれた様子もなく、声を掛けられる。


「遅い。今何時だか知ってる?」

「9時15分前だね。顔上げたら?ああ、俺の帰りが遅いから寂しかったのかな」

「バカ言わないで」



顔を上げると、フワフワとしたファーの付いたフードを被った臨也がこちらを見下ろしていた。
私程ではないにしても、少し雨に降られたらしくコートが少し濡れていた。
無言で差し出された手を見つめていると、臨也が口を開いた。


「何時まで座り込んでる気?ほら、手出しなよ」


少し強引に手を引っ張られ立ち上がらされる。



「ちょっと時間が押してね。もう少し早く帰る予定だったんだけどさ。まさか君が待ってるとは思わなかったよ」

「はい。じゃあ帰るから」



頼まれていた品物の入った袋を差し出すと、袋ではなくて腕を掴まれた。



「…その格好で?タオルくらい貸してあげるよ」

「……」

「そんな目で見ないで欲しいな。安心しなよ。昨日みたいに君をどうこうしようとか思ってないから」

「昨日はどうこうしようと思ってたって認めるの?」

「まだ怒ってるのかい?まあ、俺を信用するもしないも君の自由だけど。俺も人間だからさ、自分の帰りを待ってたずぶ濡れの女の子をそのまま帰すのは可哀相かなって思う心くらいは持ち合わせてるよ。
まだ雨も降ってたしね。で、どうする?」

「昨日は信用するなって言ってなかった?」

「おや。ちゃんと俺の話を聞いてたみたいだね。確かに言ったよ。
だから、その上で君の判断に任せる事にするよ」



玄関の扉を開けて待つ臨也を見つめ、しばし考えた後、渋々その扉をくぐった。

とりあえず、寒くて凍えそうだったので、雨宿りくらいならしても良いかなと思って…。

最近では頻繁に訪れる様になった部屋に、私は足を踏み入れた。



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